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台湾立法院選挙と今後

五十川 倫義

台湾の国会にあたる立法院選挙(12月11日)で、国民党などの野党連合が過半数を制し、民進党の陳水扁総統が進める台湾自立化路線に歯止めをかけた。しかし、住民の「台湾人意識」はなお高まる様相で、与野党の角逐、中国との緊張は緩みそうにない。

■「安定」選んだ民衆

 陳総統は2000年に初当選し、2004年3月に再選されたが、与党がずっと少数で思い切った自立化路線を進められなかったため、与党の過半数獲得が悲願だった。陳総統は今回、住民の台湾人意識に期待をかけ、「2006年末までに住民投票を実施して新憲法を決め、2008年5月に施行する」と新憲法制定への具体的な日程を掲げたり、「公営企業などの名称についている『中国』や『中華』を2年以内に『台湾』に改める」と表明したりするなど、台湾自立化の速度を上げようとした。これに対し、中台関係の現状維持を訴える国民党は「与党の台湾自立路線は中国との戦争を招く恐れがある」と訴え、「自立」か「安定」か、が最大の争点となった。
 台湾自立化の動きが独立に向かうことを恐れる中国は、中台関係について「一辺一国(それぞれ別の国)」と唱える陳総統を「独立派」と見なしてきており、12月1日には中国国務院(政府)台湾事務弁公室の王在希副主任が「中国人民は一切の代償を惜しまず、独立のたくらみを粉砕する」と警告した。中台の衝突を懸念する米国もまた、パウエル国務長官が10月、北京で「台湾独立を目指すいかなる行動にも反対する」と語るなど、陳総統にくぎを差した。
こうした緊張下の投票の結果、225議席(改選前は欠員8)のうち、与党連合は101議席(民進党89、台湾団結連盟12)にとどまり、敗れた。野党連合は合計114議席(国民党79、親民党34、新党1)を確保した。台湾のメディアは、有権者が中国との関係悪化や衝突を恐れ、安定を求めたと分析した。
 投票行動の背景として、中台の経済の結びつきも指摘される。中台貿易、台湾企業の対中投資がともに拡大しているからだ。2004年の貿易額は10月までで634億8000万砲如∈鯒同期より36.2%伸びた。2004年の対中投資額も10月までで54億ドルを数え、昨年同期の50%増だ。いまや、大陸に住む台湾人ビジネスマンは百万人とも言われる。その経営者や従業員が大勢、今回の選挙のために台湾に戻っており、安定を求めた選挙結果に影響した可能性がある。

■複雑な行方

 陳総統は敗北の責任をとって民進党主席を辞任し、2005年2月の党員選挙で新主席を選ぶ。一方、国民党の連戦主席は2004年3月の総統選で陳水扁氏に敗れたが、不正な選挙だとして敗北を認めず、党主席の地位にとどまってきた。今回の立法院選挙で勝ったことから、これを花道としての交代論が高まりそうだ。与野党で世代交代が進むことになる。
 今後の政治情勢はどう展開するか。陳総統は、総統の職務に専念して「台湾内の団結や両岸(中台)関係の安定のために力を尽くす」と述べ、野党との協力を誓った。
実際、野党の協力がなければ、政策は進まない。政府は米国からディーゼル潜水艦8隻、パトリオット3型ミサイル8組、P3C対潜哨戒機12機などを6108億台湾ドル(約1兆8000億円)で購入する予算案を提出しているが、野党の反対に遭っている。しかし、予算額の見直しなどで歩み寄る余地はある。また、いまの「中華民国憲法」は1947年に大陸で施行されたもので、現在の台湾の事情にそぐわない条項もある。「台湾国」などへの呼称の変更といった敏感な内容を避ければ、憲法を変えることにも、与野党が合意する可能性はある。
 一方、2007年に行われる次回の立法院選挙では、選挙制度が現在の中選挙区中心から小選挙区制に変わるため、主要政党はしだいに民進党と国民党を軸にした二大政党に再編されると見られている。野党陣営では、国民党と親民党がそれぞれ有利な条件を得るために激しい駆け引きを演じ、これが議案の審議や政局などに影響することもありうる。
 しかし、今後の政治情勢に最も影響を与えていくのは、やはり台湾人意識の高揚という大きな流れだろう。
台湾で行われた自分のアイデンティティーに関する世論調査を見ると、1980年代末と2000年で大きな違いがある。「自分は中国人」と思っている人は、「50%以上」から「10%台」へと大きく減り、逆に「自分は台湾人」と思う人は「10%台」から「30%台」へ、「台湾人でもあり中国人でもある」という人も「20%前後」から「40%前後」へと増えた。
 また、総統選挙における陳水扁氏の得票率を見ると、39.30%(2000.3)から50.11%(2004.3)へ伸び、立法院選挙における与党連合(民進党+台湾団結連盟)の得票率も計41.14%(2001.12)から43.5%(2004.12)へと増えている。住民の台湾人意識が拡大基調にあることがうかがえる。
 この流れを背景に、陳総統は速度を緩めつつも、自立化の政策は次々に打ちだしていくものと見られる。国民党にしてもこの流れを意識せざるをえない。中国と距離を置く姿勢を示さないと選挙で票が入らない、と国民党有力者は言う。安定を崩さないよう注意を払いつつ、政界全体が自立化の方へさらに軸を移していく可能性がある。
 焦点は、こうした流れにある台湾に対し、「統一」を掲げる中国がどう対応するかだ。中国では陳総統の再選以降、武力統一論が高まる様相が見えたが、一方で、統一を焦る必要はない、と冷静に応じる現実的な姿勢もうかがえる。いずれにせよ、けん制をより強めることになるだろう。
その核心は対米外交だ。中国は、台湾に対する米国の圧力を求め続けざるをえない。しかし、米国に対しては台湾側も接触を強めることが予想される。このところ米国との意思疎通を欠き、米国の理解が得にくくなってきたと感じているためだ。米国を巻き込んだ中台の駆け引きが活発になっていきそうだ。
(2004年12月28日記)
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