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韓国大統領選挙における特徴


2007年12月19日に韓国で第17代大統領を選ぶ選挙が実施された。韓国では第17代大統領選挙と呼ばれている。当選者は、ハンナラ党の候補者・李明博である。以前のコラムでも書いたように、韓国の政党は、全羅道を支持基盤とする「進歩勢力(与党圏)」の政党と慶尚道を支持基盤とする「保守勢力(野党圏)」の政党に分かれて対立している。今回、保守勢力の政党であるハンナラ党の候補者が、進歩勢力の政党候補者を破って当選した。進歩勢力は、1998年の金大中政権以来、10年にわたって政権を維持し続けたが、ついに政権の座を保守勢力に引き渡すことになる。李明博の大統領就任予定日は、2月25日である。

表1 1987年の民主化以降の大統領選挙における投票率
選挙名 実施日 投票率
第17代 2007年12月19日 63.0%
第16代 2002年12月19日 70.8%
第15代 1997年12月18日 80.7%
第14代 1992年12月18日 81.9%
第13代 1987年12月16日 89.2%
※第2代から第7代も現在と同じ直選制大統領選挙であったが、投票率が70%台を下回ったことはない。また、それ以外は間選制であって、投票率データはない。

今回の大統領選挙では、いくつかの目立った特徴があった。それを本稿で挙げてみようと思う。まず、その投票率の低さである。今回の大統領選挙における選挙人数は37,653,518名であり、総投票数は23,732,854票であった。従って、投票率は63.0%であり、韓国の大統領選挙では過去最低記録である。


また、表2で見られるように、今回の大統領選挙には10名の候補者が出馬した。これは、韓国の大統領選挙では過去最多記録である。保守・進歩勢力からもそれぞれ複数の候補者が出馬し、保守・進歩勢力に属さない候補者も数多く出馬した。

表2 大統領候補一覧
候補番号 所属政党 候補者名 得票数 得票率
1 大統合民主新党 鄭東泳 6,174,681 26.1%
2 ハンナラ党 李明博 11,492,389 48.7%
3 民主労働党 権永吉 712,121 3.0%
4 民主党 李仁済 160,708 0.7%
6 創造韓国党 文国現 1,375,498 5.8%
7 参主人連合 鄭根謨 15,380 0.1%
8 経済共和党 許京寧 96,756 0.4%
9 新時代チャムサラム連合 全寛 7,161 0.0%
10 韓国社会党 琴民 18,223 0.1%
12 無所属 李会昌 3,559,963 15.1%
※5番と11番は途中で候補辞退

進歩勢力はもともと大統合民主新党と民主党に分かれており、それぞれ別の候補を選出していた。民主新党では、比較的国民に人気があった孫鶴圭を抑えて、党内組織票を集めた鄭東泳が候補者に選出された。民主党では、前回の大統領選挙における党内予備選で盧武鉉に敗れた李仁済が候補に選出された。また、保守勢力では、ハンナラ党が李明博を候補者として選出し、候補の単一化に成功していたが、前々回と前回のハンナラ党大統領候補者であった李会昌がハンナラ党を脱党し、無所属で大統領選挙に出馬することを2007年11月7日に宣言した。こうして保守勢力の票は二人の候補に分かれることになった。他にも、新たに誕生した新党なども加えて、9政党の公認候補と1無所属候補が大統領選挙で争った(大統領選挙候補者登録時は11政党、1無所属)。

また、今回の大統領選挙の当選者である李明博は、11,492,389票を獲得した。総投票数の48.7%という得票率である。表3で示されるように、1987年の民主化以降の大統領選挙において最多得票率で当選したのは、現大統領の盧武鉉であり、48.9%であった。

表3 大統領選挙における当選者の得票率
選挙名 当選者 得票率
第17代 李明博 48.7%
第16代 盧武鉉 48.9%
第15代 金大中 40.3%
第14代 金泳三 42.0%
第13代 盧泰愚 36.6%

李明博の得票率は僅かな差ではあるが、過去2番目の高さとなる。なお、民主化以前の選挙では、制度が時期によって異なるので単純に比較できないが、1963年10月15日に実施された大統領選挙(第5代)において朴正熙が46.6%の得票率で当選したのが最低記録であり、他は50%以上の得票率で当選している。



当選者と2位候補者の得票差も、民主化以降においては新記録の5,317,708票である。今までの最高得票差は、1987年12月16日に実施された大統領選挙(第13代)における盧泰愚と金泳三の得票差である1,945,157票であった。今回の得票差は、その約3倍にもなる。なお、この記録は、2人以上の候補者が出馬した韓国の大統領選挙では、民主化以前でも過去最高得票差となる。ただし、1960年3月15日に実施された大統領選挙(第4代)で、野党候補の趙炳玉が選挙前に死亡し、李承晩が選挙に単独出馬したため、2位候補者が不在のまま9,633,376票を獲得し、当選したことがあった。出馬できなかった候補者である趙炳玉は、当然0票であり、李承晩の得票がそのまま趙炳玉との得票差となって、歴代最高得票差となる。李承晩の得票率は100%であるため、民主主義制度の下では破ることが不可能な記録である。

また、保守勢力と進歩勢力の支持基盤における得票格差(地域主義)が、民主化以来、韓国の選挙に最も大きな影響を与えてきた要因であることを前回のコラムに書いたが、今回の大統領選挙でも地域主義の影響は確認できる。表4で見られるように、進歩勢力候補者は、その支持基盤である全羅道で、民主主義制度下の選挙としては信じ難い高得票率を確保してきた。

表4 全羅道における進歩・保守勢力の候補者の得票率
選挙名 進歩勢力候補者得票率 保守勢力候補者得票率
第17代 80.12% 9.14%
第16代 92.52% 5.38%
第15代 93.51% 3.83%
第14代 90.74% 4.89%
第13代 87.30% 10.78%
※進歩勢力候補者や保守勢力候補者は、候補が複数に分かれた場合もあるが、それぞれの党圏における最多得票の候補だけで比較してみた。

しかし、今回、その得票率は過去最低である。反対に、保守勢力候補者の得票率は全羅道では低い水準に留まってきたが、今回は比較的高い得票率を確保した(第13代に続いて過去2位)。これだけで地域主義が弱まったとはいえないが、支持基盤である全羅道で進歩勢力の候補者の得票率が約80%まで落ちたのは興味深い。


また、今回の大統領選挙の特徴として、約4ヶ月後の4月9日に国会議員選挙が控えていることが挙げられる。今回のように、大統領選挙の直後に国会議員選挙が実施されるのは、韓国の現行憲法下では20年に1度しかない。大統領の任期が5年であり、国会議員の任期が4年だからである。

国会議員選挙がすぐ後に実施されることが大統領選挙に与えた影響として考えられるのは、進歩勢力の小政党である民主党が民主新党と合併しなかったことではないかと思われる。民主党が民主新党と合併し、進歩勢力の候補を単一化しようという声もあったが、結局は最後まで政党合併もなく、候補の単一化にも至らなかった。民主党は、小政党として生き残る戦略を選んだわけである。それは、一人しか選出されない大統領選挙と異なり、比例代表制が導入されている国会議員選挙では、小政党である民主党も大政党と合併することなく、それなりの存在感を示すことができるからと考えられる。

また、大統領選挙が終わってから国会議員選挙が実施されるまで期間が約4ヶ月しかないため、大統領選挙で勝利した政党は、余勢を駆って国会議員選挙でもまた勝利しやすい。このような選挙は、韓国では、制度上、20年に1度しかないのである。もしハンナラ党が勝利すれば、大統領府も国会も同じ政党が掌握することになるため、強力な政府が誕生することになる。もっとも、必ずしも勝利するわけではなく、20年前に実施された国会議員選挙では、与党である民主正義党が敗北した。今年4月の国会議員選挙では、ハンナラ党が勝利する可能性が高いと考えられるが、必ずしも結果がそうなるとはいえないのである。


(2008年1月9日記)
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