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EUの議長国


EU(欧州連合)には議長国という制度がある。議長国はEUの運営において、EU理事会(担当分野ごとの閣僚会議)では議長国の閣僚が議長を務め、議長国の首脳は欧州理事会(首脳会議)の議長を務める。そしてEUの議長国は、単なる運営上の役割だけでなく、任期中はEUを対外的に代表する顔として、EUの対外関係を司る。昨年のグルジア紛争においてフランスのサルコジ大統領が積極的に調停を試みたことや、最近のガザでの紛争でチェコ政府が調停に向けて声明を出したりしていることは、EU議長国としての立場によるものである。

議長国は半年ごと(1〜6月の上半期と7〜12月の下半期)の輪番制で、全ての加盟国が持ち回りで務める。例えば2007年から2018年までの議長国は下記の表のようなローテーションとなっている。EUの中でも特定の地域の国が続かないように、また大国が続いたり小国が続いたりしないように、地域のバランスや大国と小国のバランスを取りながら順番が組まれている。現在の議長国はチェコである。

2007年1〜 6月 ドイツ 2013年1〜 6月 アイルランド
2007年7〜12月 ポルトガル 2013年7〜12月 リトアニア
2008年1〜 6月 スロバキア 2014年1〜 6月 ギリシャ
2008年7〜12月 フランス 2014年7〜12月 イタリア
2009年1〜 6月 チェコ 2015年1〜 6月 ラトビア
2009年7〜12月 スウェーデン 2015年7〜12月 ルクセンブルク
2010年1〜 6月 スペイン 2016年1〜 6月 オランダ
2010年7〜12月 ベルギー 2016年7〜12月 スロバキア
2011年1〜 6月 ハンガリー 2017年1〜 6月 マルタ
2011年7〜12月 ポーランド 2017年7〜12月 イギリス
2012年1〜 6月 デンマーク 2018年1〜 6月 エストニア
2012年7〜12月 キプロス 2018年7〜12月 ブルガリア

また、議長国の任期は半年と短いため、EUの運営の継続性を担保するために、連続する3期の議長国でひとつのチームを作り、EUの諸問題に協力して対処するという仕組みが慣例としてできつつある。例えば昨年下半期議長国のフランスと、今年の議長国のチェコ、スウェーデンの3ヶ国でひとつのチームを作り、議長国を残りの2カ国がサポートするという仕組みである。今回のガザでの紛争において、チェコ政府だけでなくサルコジ仏大統領が調停のために中東を歴訪していることは、この問題が昨年末からの継続事項であるということに加えて、上記のような議長国のチームという文脈によるものでもある。同様に調停のために現地を訪れているEU代表団は、ソラナCFSP上級代表と、議長国チェコ、そしてフランス・スウェーデンの外相で構成されている。

EUの議長国はあくまでも対等な加盟国間の取りまとめ役であって、議長国が他の加盟国と比べて特別な権限を持っているわけではない。しかし、議事の進行やアジェンダの選定など、議長国が持つ実質的な影響力は小さくない。とりわけ議長国が大国である時、議長国が積極的にイニシアチブをとる場合には大きな影響力を持つ。例えば2007年6月の欧州理事会では、欧州憲法条約に代えて新しい改革条約(後に「リスボン条約」として同年12月に議長国ポルトガルのリスボンで調印)を締結するという基本方針が、議長国ドイツの強いイニシアチブによりまとまった。また昨年2008年下半期の議長国フランスは、外交の分野でEU議長国という立場を最大限に活用した。グルジア紛争や今回のガザでの紛争などで顕著に見られるように、EUが外交や安全保障の分野でより積極的な政策を推し進めようとする場合、EU議長国の役割は非常に重要となる。

ただし、今後リスボン条約が発効すれば、欧州理事会は新設される常任の議長(「欧州理事会議長」)が議長国首脳に代わって議長を務めることになり、EU理事会の中で外交分野を担当する外務理事会では、議長国外相ではなく新設の「外交安全保障上級代表」が議長を兼ねることになる。そうなれば議長国の影響力は大きく薄まることになるであろう。リスボン条約は2009年末の発効を目指して批准の過程を進めているが、具体的にいつ発効するかはまだ予断を許さない状況であり、少なくともそれまでの間、EUの議長国はEUの対外政策において重要な役割を持つことになるであろう。


(2009年1月7日記)
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