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欧州委員会委員長〜2期目を迎えるバローゾ委員会〜


欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員会委員長が、2009年9月16日に欧州議会で続投が承認され、1期目の満了を迎えて11月1日より2期目を向かえた。欧州委員会委員長が再選されるのは久しぶりである。その前のプロディ委員長(在任1999-2004)、サンテール委員長(在任1995-1999)はいずれも1期で委員長を退任しており、欧州委員会委員長が再選されるのは、ECからEUへの移行期に重要な役割を果たしたドロール委員長(在任1985-1995)以来となる。

欧州委員会とは、EUにおける法令等の起草やEUの決定の実際の執行を司る、EUの執行機関であり、その長である欧州委員会委員長は、閣僚に相当する欧州委員と約2万人のEU官僚(ユーロクラート)を束ねてEUの執行を行う重要なポストである。欧州委員会委員長は、欧州理事会(首脳会議)が選出し、選出された委員長は他の委員の名簿とともに欧州議会の承認を経て正式に任命される。新しい基本条約であるリスボン条約発効後は、欧州委員会委員長は欧州理事会の提案を基に欧州議会が選出することになっており、欧州議会の主導権がより強まる形となっている。

リスボン条約は現時点ではまだ発効していないが、今回の委員長の再選については、リスボン条約による委員長選出の仕組みが多分に意識された形跡が見て取れる。欧州委員会の任期満了に先立ち、欧州議会の総選挙が今年6月に行われた。欧州議会の選挙は、各国毎に人口比で割り振られた議席を、比例代表で選出するという仕組みであるが、欧州議会議員は選出国を代表するのではなく、各国のキリスト教民主主義政党が集まった中道右派の「欧州人民党(EPP)」や社会民主主義政党が集まった「欧州社会党(S&D)」というように、欧州レベルの会派毎に行動する。そして今年の欧州議会選挙の特徴は、欧州レベルの各会派が、次期欧州委員会委員長の人選(ないしは続投の是非)を選挙の論点のひとつに掲げたことである。バローゾ委員長は、欧州人民党に加盟するポルトガル社会民主党(ポルトガルでは社会民主党という政党は中道右派政党である)に所属しており、バローゾ委員長の続投支持を選挙戦で明確に打ち出した欧州人民党が多数を占めたことにより、バローゾ委員長の再選に弾みがついた。

5年前にバローゾ委員会の1期目が発足するときには、委員の人事などで欧州議会の反対に会い、発足が難航したのだが、今回のバローゾ委員長の続投は、特に強い反対もなく、特に有力な対抗馬もいないままに決まった。このことは、世界金融危機への対処や気候変動問題への取り組み、リスボン条約につながるEUの機構改革などにおける、この5年間のバローゾ委員会の舵取りが認められたということを意味するものでもあろう。

バローゾ委員会は新たな2期目の施政方針において、経済危機からの脱却や気候変動問題など、EUの諸課題に引き続き積極的に取り組む旨の方針を打ち出している。バローゾ委員長は今後のEUの運営に引き続き重要な役割を担うことになるであろう。そして、2期目のバローゾ委員会は、おそらくリスボン条約の下での最初の欧州委員会となるであろう。リスボン条約で設置される常任の「欧州理事会議長」(いわゆる「EU大統領」)や、欧州委員会副委員長を兼ねるとともに外務理事会の議長も兼ねる「外交安全保障上級代表」(いわゆる「EU外相」)などの、新しいポストとの円滑な協力関係の構築もまた、2期目のバローゾ委員会の重要な仕事となるであろう。
(2009年11月4日記)
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