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0 0   ハッジ(イスラムの巡礼)

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ハッジ(大巡礼)とは、ヒジュラ歴(イスラム歴)第12月(巡礼月、ズー・アルヒッジャ)8日から始まるメッカ巡礼であり、それ以外の時期に行われるメッカ巡礼(小巡礼、ウムラ)、メディナの預言者モスクや各地の聖者廟などへの参詣(ズィヤーラ)とは区別される。イスラム教徒の義務とされる五行の一つではあるが、その根拠であるコーラン3章97節にあるように、財力や体力を有する者が一生に一度は行なうべきものとされ、絶対的な義務ではない。ハッジ経験者は、その氏名の冒頭に「ハッジ」を付けて名乗り、家の外壁にカーバ神殿や船、飛行機などの絵を描く例が多い。

預言者ムハンマドが死の直前に行なった「別離の巡礼」(632年)に倣い、8日のカーバ神殿内での各種の礼拝や儀礼に始まり、9日にメッカ東方のアラファートでのウクーフ(悔い改め)、10日にメッカとアラファートの中間にあるミナーの谷での悪魔の石柱への石打の儀礼を行ない、10日の日没より供儀(羊などを屠る)を行なって終了する。この供儀は同時にイスラム世界各地で行なわれ、最大の祝日(3〜4日間)である「巡礼明けの大祭(犠牲祭、イード・アルアドハー)」の始まりとなる。なお、多くの巡礼者がその後メディナに移動し、預言者モスクでの礼拝を行なうが、これは慣習であって、ハッジには含まれない。

遠隔地から大量のイスラム教徒が定期的に集うハッジは、最大の宗教行事であるとともに、中世期には郵便や商業、移住などといった、イスラム世界の交流に大きな役割を果たした。近代期には、ヨーロッパ帝国主義への抵抗に関わる情報交換や協議の場ともなった。現代では、80年代にイスラム革命後のイラン巡礼団が、挑発的な集会を繰り返したこともある。また、先に終了した本年2月のハッジでは、イラク問題に配慮して厳戒態勢が敷かれた。

メッカ、メディナという2聖地の守護を国是とするサウジアラビア政府にとって、このハッジは国家の威信と支配の正当性に関わる最重要行事であり、特に巡礼省を設けて毎年のハッジにあたっている。交通機関の発達などに伴う巡礼希望者の飛躍的な増加のため、80年代以降はイスラム諸国会議機構(OIC)が巡礼省に協力し、各国に全人口のおよそ0.1%を割り当てるようになった。それでも、サウジ国外から毎年100万人強の巡礼者が参加し、サウジ国内からの参加者を合わせ、約200万人がハッジを行なっている。


(グローバル・イシューズ主任研究員 松本 弘



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