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(台湾の)住民投票


中国語:「公民投票」または略して「公投」、英語:''referendum''

「中華民国」政権が現在統治している領土内で、全有権者からなる投票を実施し、重要な問題についての是非を問うこと。

台湾では、陳水扁総統のイニシアチブで2004年3月20日の総統選挙にあわせてミサイル防衛装備の購入拡大の是非を問う住民投票が実施されることになっている。自国の政治発展という観点から、住民投票によって総統の直接選挙よりもさらに高いレベルの民主政治が実現できるとして、台湾では投票そのものは肯定的にとらえられている。しかし台湾で民主化が外来政権・国民党への反対運動として推し進められてきたことが、この問題をより複雑にしている。

1945年まで日本の統治を受けていた台湾の人々にとって、戦後になって中国大陸から台湾島に上陸した国民党政府もまた外からやってきた他者であった。国民党は1947年の二・二八事件で多くの本省人(戦前から台湾に住んでいた人々)を虐殺し、これ以降台湾社会に対して力による政治的弾圧を開始し、1949年からは戒厳令を敷いた(1987年まで)。本省人が国民党に対抗し政治的自由と民主化を模索していく過程で、彼らの間に大陸からやってきた国民党ではなく台湾に生まれ育った自分たちが台湾の前途を決めるべきだという「住民自決」の意識が芽生え始める。その手段として重視されたのが、台湾の民主化を実施して全台湾人による住民投票を行うことであった。「住民自決」は、1983年の国会選挙で反国民党勢力の共通スローガンとなり、1986年に結成された民進党の綱領に受け継がれていった。

1987年、蒋介石を継いだ蒋経国が死去し、本省人である李登輝が国民党内の手続きによって台湾の総統に就任すると、台湾の民主化は大きな転換局面を迎える。1996年には初めて直接総統選挙が行われ、2000年には初めて国政レベルで民進党への政権交代が実現した。この過程では、民主化と並行して台湾社会の台湾化が進み、かつて国民党が台湾社会に強制した「中国」としてのアイデンティティではなく、「台湾」としての新しいアイデンティティが育まれていった。

このような経緯があるため、中国からすれば、台湾の民主化は「一つの中国」を否定する台湾独立への伏線と映る。中国は従来、台湾が住民投票で民主主義という美名の下に中国からの独立を宣言することを懸念し、その場合には武力行使も辞さないと主張している。そのため、台湾海峡の現状維持を期待する米国も、台湾が住民投票を行えば台湾海峡情勢をいたずらに緊迫させることになると警戒を強める。

台湾ではこの1年、民進党(現政権党)を中心に、住民投票を実施して新憲法を制定せよという動きが強まっている。議論が全社会的な盛り上がりを見せたため、対中関係への考慮から住民投票の実施に慎重だった国民党と親民党の野党連合の姿勢が積極化し、2003年11月27日、立法院で野党案をもとにした住民投票法が採択されることとなった。続けて11月末、陳水扁総統は、中国が台湾に向けているミサイルを撤去するよう求める住民投票を春の総統選挙にあわせて実施すると表明した。陳水扁陣営は総統戦で当初劣勢に立たされていたため、この提案によって巻き返しを図ろうという意図があったとみられている。

しかし12月9日、中国の温家宝総理と会見したブッシュ大統領は、「一方的に台湾海峡の現状を変えようとするいかなる試みにも反対する」と述べ、住民投票に否定的な姿勢を明確化した。これを受けて、台湾当局もやや穏健な姿勢に転じることになる。2004年1月16日、陳水扁総統はテレビ談話を行い、住民投票の実際のテーマ二項目を次のように発表した。

第一テーマ「台湾の人民は台湾海峡問題が平和的に解決されるべきであると主張しています。中共が台湾に照準を合わせたミサイルを撤去せず、台湾に対して武力を使用することを放棄しないのであれば、台湾の自主防衛能力を強化するために政府が反ミサイル用装備の購入を増やすことに賛成ですか。」

第二テーマ「両岸のコンセンサスと人民の福祉を追求するために、政府と中共が話し合いを行い、両岸関係に平和と安定をもたらたす枠組みを構築していくことに賛成ですか。」

陳水扁陣営は議題をこのように設定することで、台湾への武器売却で利益を得ている米国の承認を取りつけ、中共に対しても台湾の民意を示して無条件対話の実現を強く求めようとしたのである(中国側は従来、「一つの中国」を認めることが対話実現の入り口であるとしている)。これに対して、19日、中国側からは唐家セン*国務委員が「これは大陸側の平和への努力をけなし、両岸関係に対して挑発をしかけるものである」と批判を強めている。

*唐家センのセンは、王偏に旋。

(研究員  益尾知佐子)

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