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0 0   イラク復興支援会議

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10月23日〜24日、スペインのマドリードでイラク復興支援会議が開催され、約60カ国と19の国際機関が参加した。主な各国・各機関の拠出額は米国の203億ドル(今後1年6ヶ月)、日本の50億ドル(2004年から4年間。うち2004年に拠出する15億ドルは無償資金、そのほかは円借款を基本とする予定)、イギリスが9億3000万ドル、EUおよび加盟各国が8億2500万ドル(2004年から2年間。これとは別枠で人道支援目的に8億6000万ドル)、サウジアラビアが10億ドル、クウェート5億ドル、イラン3億ドル、イタリアが2億3500万ドル、アラブ首長国連邦が2億5000万ドル、世界銀行が30〜50億ドル(今後5年間)、IMFが25億〜42億5000万ドル(2004年から4年間)などとなっている。会議後の記者会見では総額330億ドルと発表された。そのうち、250億ドル程度が無償資金と見られる。ただし、これは各拠出表明額の下限をとり、かつ輸出引用供与や技術支援を除外したものであるため、実質的な総額はこれを上回る380〜400億ドルに達する。無論、国連と世界銀行が試算した必要額550億ドル(2004年から4年間)やイラク統治評議会のガイラーニー財務担当大臣が要請した700億ドル、ブッシュ政権が現在試算している500〜750億ドル(今後4年間)には及ばないが、当面の資金確保としては、予想を上回る成功であったといえよう。

これらの資金は、今後設立される信託基金に集められ、国連や各国・各機関からの代表が組織する運営委員会で運用される予定となっている。しかし、米国の拠出額の多くは信託基金ではなく、米英によるCPA(連合国暫定当局)のイラク開発基金に回される模様で、これに対しては不満や批判が生じている。復興事業を米企業が独占する状況には既に批判が大きく、今回の会議でフランス、ロシア、ドイツからの独自の拠出表明がなかった理由のひとつも、そのような復興資金運用の不透明さにある。信託基金とイラク復興資金との関係の調整や、各国の利害や思惑の衝突を避ける努力がなされなければ、莫大な復興資金の公正かつ効率的な運用に障害が出る恐れがある。また、総額1250億ドルと推定されるイラク債務(日本の公的債権は約4000億円、民間債権は約1500億円)の問題も、復興支援の障害となっている。今回の世銀やIMFの拠出額も当然ながら融資であり、これを含めた拠出額の有償部分は、そのままイラクの債務総額に加えられることになる。復興支援資金の大きな枠組みが決まったことは、そのまま過去の債務削減やリスケの実施が今まで以上に必要となったことを意味している。さらに、最大の問題は、言うまでもなくイラクの治安である。治安が確保されない限り、復興支援には限界があるし、また石油輸出の再開にも悪影響が続く。逆に治安の確保は、復興支援が有効に実施され、同時に石油収入によるイラクの自己資金が復興事業や債務返済に活用されることにつながり、それだけ支援の意義は大きくなり、各国の負担は軽減されることになる。

(2003年11月6日記)


(グローバル・イシューズ主任研究員 松本 弘