第6回東京グローバル・ダイアログ 第3セッション「欧州の安全保障情勢がインド太平洋に与える影響」

本セッションでは、ウクライナ紛争の地政学的な影響が中心に議論された。基調講演を行ったペヴクール・エストニア共和国防衛大臣は、ロシアが北朝鮮、中国、イランといった新たな枢軸国と協力し、ウクライナ戦争で勝利を収めることは決して許されないと強調した。ペヴクール大臣はまた、戦争の負担をウクライナに押し付けることは許されるべきではなく、民主主義諸国がウクライナを支援することで、ロシアに対する戦争のコストを高めていく必要があると述べた。この中で、バルト諸国の国防費がすでにGDPの5%以上に達していることが明らかにされ、特にエストニアはその中でも最も高い支出をしており、他のNATO諸国に対しても一層の努力を求めた。さらに、ペヴクール大臣は、戦争終結のためにはロシアに対してウクライナに与えた損害を賠償せしめ、公正で持続的な平和を確立するための強制力、すなわち軍事力が不可欠であるとの立場を示した。
パネリストたちは、ウクライナ戦争が世界全体、特にインド太平洋地域における抑止力に与える影響について議論を交わした。彼らは、ロシアがウクライナに対して行っている影響工作の実態についても言及し、アジアにおける現状変更を試みる動きを抑制するためには、ウクライナ戦争をどう終わらせるかが極めて重要であるという点で意見が一致した。さらに、極右政党の台頭や欧州・アメリカ大陸における内政の混乱が対外政策や民主主義秩序を揺るがしている現状にも触れられた。これに対抗するために、偽情報への対処、民主主義の回復力を高めるための戦略的コミュニケーション、教育、そして国際協力の重要性が強調された。
