日本国際問題研究所は、2025年11月17日から21日にかけてオランダとノルウェーとリトアニアを訪問し、現地の研究機関等とラウンドテーブルの実施及び会議への参加をしました。本訪問では、ハーグ戦略研究所(HSSC)、オランダ国際問題研究所(クリンゲンダール研究所)、 ノルウェー国際問題研究所(NUPI)と協議を行い、国際秩序の変容や安全保障問題について議論を交わしました。 また、Geopolitics and Security Studies Center(GSSC)の年次総会には日本国際問題研究所の吉田朋之所長 が登壇しました。
ハーグ戦略研究所(HSSC)とのラウンドテーブル
11月17日に開催された本ラウンドテーブルでは、地政学的および地経学的課題が取り上げられ、特に日本やオランダのような中堅国家(Middle Powers)の役割を含む大国間競争に焦点を当てて議論が行われました。主要なポイントとしては、防衛協力の重要性、特に半導体や重要原材料分野での協力の必要性、そしてNATOとインド太平洋地域諸国との戦略的連携の必要性が強調されました。また、日本政府が防衛費をGDPの2%に引き上げ、NATOとの安全保障関係をさらに深化させる方針についても言及され、欧州側から歓迎の意図が示されました。さらに、会議では国際法の執行における課題や、台湾有事がもたらす経済的・軍事的影響の可能性についても議論されました。

オランダ国際問題研究所(クリンゲンダール研究所) とのラウンドテーブル
11月17日に開催された本ラウンドテーブルでは、日本とオランダが直面する地政学的課題および経済安全保障の問題について議論されました。主要なポイントとしては、高市政権が掲げる主要政策課題や、GDP比2%の防衛費目標の行方などが取り上げられました。日本側からは、中国、ロシア、北朝鮮という核兵器を保有する修正主義国家群に取り囲まれ、世界的な地政学的変動が加速する中で、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増しているとの情勢認識に基づくものであることが説明されました。
さらに、ヨーロッパとインド太平洋の安全保障の相互関係や、ウクライナ戦争が世界の安定に与える影響について意見交換を行い、認識の共有を図りました。このほか、安全保障上の依存が経済に及ぼす影響、特に防衛装備品などアメリカ製品の購入圧力についても議論が及びました。これらの重要課題に関する今後の相互の研究協力に焦点を当てて、議論は締めくくられました。

ノルウェー国際問題研究所(NUPI)とのラウンドテーブル
11月19日に開催された本ラウンドテーブルでは、インド太平洋とヨーロッパにおける相互に関連する安全保障上の課題が議論され、特にウクライナ戦争や米中対立の影響について時間を割きました。これらの議論を通じて、日本と欧州、ノルウェー間のより緊密な協力の必要性について共通の認識が確認され、特に軍事、技術、エネルギー分野での連携の重要性に言及がありました。
議論では、北極の戦略的重要性や地域における地政学的変化、中国とロシアの無制限関係の評価などにも及びました。また、オスロ合意をまとめた実績のあるノルウェーの代表的シンクタンクとして、中東情勢についてのプレゼンもあり、中東情勢が国際ガバナンスに与える影響についても検討しました。オスロプロセスや二国家解決策、米国と中東諸国の関係が持つ意味についてノルウェーとしての見解も示されました。意見交換は、今後の相互の研究協力と政府間の政策調整の整合性を高めていく取り組みを求めていく方向性で締めくくられました。

Geopolitics and Security Studies Center(GSSC)年次総会への登壇
11月21日に開催されたGSSCの年次総会には主にアメリカや欧州各国から出席があり、主要シンクタンクとの共催パネルが複数開催されました。また、GSSCは大統領府とも緊密に連携しており、ギターナス・ナウセーダ大統領への登壇者表敬、大統領府国家安保補佐官等との意見交換、大統領によるパネルディスカッションが行われました。日本国際問題研究所の吉田朋之所長は RAND Europeとの共催で開催されたパネルに登壇し、長期的な国家安全保障の本質について議論しました。他の登壇者は、イラン・バーマン(アメリカ外交政策評議会シニア・バイスプレジデント)、ルース・ハリス(RAND ヨーロッパ 国家安全保障部エグゼクティブディレクター)、クリスティ・ライク(エストニア国際防衛・安全保障センター所長)で、国際問題協会のリサーチフェロー、ドミニク・プレスルがモデレーターを務めました。
議論では、防衛意志の重要性、持続的な防衛投資、技術的優位性、同盟国間の緊密な調整の必要性が焦点となり、特にイランや北朝鮮のような権威主義国家の核開発野心を踏まえた対応が強調されました。パネリストらは、欧州の防衛調達の非効率性や統一的アプローチの必要性についても言及し、戦略的コミュニケーションの重要性、ハイブリッド脅威の明確な特定、そして防衛協力強化におけるNATOおよびEUの役割も強調されました。
