2025年度外交・安全保障調査研究事業費補助金 発展型総合「アジア・大洋州地域における安全保障上のリスクの実態」内 「朝鮮半島情勢とリスク(北朝鮮核・ミサイルリスクおよび韓国内政・外交)」研究会 「北朝鮮核・ミサイルリスク部会」政策提言

2025年度外交・安全保障調査研究事業費補助金 発展型総合「アジア・大洋州地域における安全保障上のリスクの実態」内 「朝鮮半島情勢とリスク(北朝鮮核・ミサイルリスクおよび韓国内政・外交)」研究会 「北朝鮮核・ミサイルリスク部会」政策提言

本「政策提言」は、3年計画で行われる「朝鮮半島情勢とリスク」研究会の3年目(2025年度)の活動より得られた知見のうち、特に「北朝鮮核・ミサイルリスク部会」に関するものを総合して作成している。本提言の内容は同研究会が実施した複数の研究会合での所属メンバー間の(「韓国内政・外交部会」も含めた)議論に基づいており、また「北朝鮮核・ミサイルリスク部会」メンバー全員の総意として文章化されている。なお、本研究会の所属メンバーが本補助金事業において披瀝するのはすべて個人的な見解であり、したがって本提言はいかなる組織・機関の見解も代表するものではない。

3年計画で行われる本研究会では事業期間中に、比較的短期のスパンを念頭に置いた提言を継続的に発出して、研究会の成果発表の一部に位置づける方針である。この方針に基づき、本「政策提言」では2025年~2026年にかけての直近の地域・国際情勢を念頭に置きつつ、本研究会(特に「北朝鮮核・ミサイルリスク部会」)の直接の考察対象である北朝鮮の核・ミサイル開発と関連した情勢についての分析と、それをふまえて日本として考えるべき/取り組むべき課題や、当該分野での政策に関するインプリケーションについての記述をもって、提言のとりまとめを行っている。なお、編集作業の関係上、本提言は直接的には2026年初頭までの動向をもとに作成されている点を付記する。

1.北朝鮮の動向(評価と展望)

分析

  • 朝鮮労働党第8次大会期(2021年~2025年)を通じ、北朝鮮は核兵器の小型・軽量化(戦術兵器化)、超大型核弾頭の開発、精密打撃(先制攻撃・報復攻撃)能力向上、極超音速ミサイル、水中・地上発射ICBMの固体燃料エンジン化、原子力ミサイル潜水艦の開発、軍事偵察衛星の運用、偵察用ドローンの開発を目標に掲げ、その実現を目指した。それらの課題の達成状況には差異があるが、核ドクトリンの明示(核使用法令:2022年9月)と憲法改正(2023年9月:「責任ある核保有国」として自国を定義)、戦術核弾頭と発射用ロケット砲の配備、ICBM発射実験、ミサイル潜水艦と駆逐艦の新造および原子力潜水艦の建造、軍事偵察衛星の初の打ち上げを行って核・ミサイルに関する「能力と意図」の向上をさらに明確にした。
  • 同党第9次大会(2026年2月)は未達成課題への継続的な取り組みとともに、核弾頭の増産、多様な運搬手段の開発、地上・水中発射型ICBM/SLBMの強化、対衛星攻撃能力の獲得、AIを活用した無人攻撃能力と電子戦能力の強化などを目標に据えた新たな「国防科学発展・武器体系開発5か年計画」を策定した。
  • 近年の北朝鮮はこれまで核兵器の「使命」として掲げてきた「戦争抑止」と「戦争遂行」のうち、後者を特に強調しており、有事におけるエスカレーション・ドミナンスの確保、そしていわゆる斬首攻撃に対しても確実に核報復が行われるようにする懲罰的抑止の確立を目指す姿勢が顕著になっている。通常戦力としての海軍力(特に水上戦力)および空軍力の強化を唱える傾向もその一環と解釈しうる。
  • ただし、その過程では、核軍拡競争を甘受する姿勢が表面化し、核開発によって抑止力を向上させ、軍事費の膨張を回避して経済建設により多くのリソースを充当するとのかつてのロジックが退潮している。統治の安定性に直結するものとして可視的な経済成果導出の必要性が高まるなか、核開発・通常戦力・経済建設の「三兎を追う」姿勢は北朝鮮体制にとってのリスクになっている。北朝鮮がロシア・中国との関係から(特にロシア派兵に関連して)得ている利益は「カンフル剤」になるにせよ、これらの需要すべてをカバーしうるものとはみなしがたい。

提言

  • 北朝鮮の核・ミサイル開発は―もとより国際法違反の行為ではあるが―いっそう進展し、北朝鮮なりの核戦略を遂行しうる能力の構築が進められている。日本の抑止面での対応能力との間での「ギャップ」が、時間とともに拡大していることが認識されねばならない。
  • また、北朝鮮体制が根本的な統治不安を内包している点も念頭に置く必要がある。北朝鮮のいう「戦争抑止」「戦争遂行」という2つの「核兵器の使命」がシームレスなものであること、さらに核兵器の運用体制の確実な稼働が―党第9次大会で言明されたように―今後の課題とされていることもふまえれば、判断ミスやシステムの脆弱性による偶発的な核兵器使用のリスクに対する懸念は依然存在している。
  • 「責任ある核保有国」としての地位をさらに強調する北朝鮮は、現状、核兵器の三本柱(トライアド)を備えた「フル・スペックの」核能力の構築を目指すと考えられる。米本土に対する核攻撃能力(ICBM)の放棄のみを条件とした制裁緩和・米朝国交正常化交渉といった手法が成立しうる可能性がより低くなっていることも留意される必要がある。

2.朝中露関係の今後

分析

  • 北朝鮮はロシア派兵・兵器提供により直接的な対価に加え、ドローンと非対称戦を多用する現代戦のノウハウを獲得し、戦略的に重要な技術(ICBM再突入体、原子力潜水艦用原子炉・タービン・冷却装置、軍事衛星用高解像度レンズなど)の移転も進めている可能性が高い。上記の核・ミサイル能力・通常兵力増強の動きに加えて兵器生産や特殊作戦部隊の強化などの傾向が可視化されていることはその証左とみなしうる。また両国の「協力関係」には労働者の大量派遣、IT労働者の活動拠点の提供なども含まれるとされる。
  • 中国は非制裁対象品目の対北輸出や加工貿易を続けており、また制裁対象である石炭や鉄鉱石の密輸が北朝鮮の外貨収入源となっている可能性がある。北朝鮮からの労働力(含IT労働者)派遣も依然数千名規模とされる。
  • 中露両国の存在は北朝鮮にとって国連安保理決議に基づく経済制裁の実効性に影響を与えるものであるほか、独自制裁を実施する日本にとっても、北朝鮮製の原料が部分品・製品として日本に輸入されるリスクをもたらしている。
  • ただし、ロシアにとっては、米国との間でウクライナ侵略をめぐる合意が実現すれば北朝鮮の重要性は相対的に低下する可能性が高い。北朝鮮が対ロ関係の「同盟化」を強調する背景にはそのような事態への懸念があると考えられる。
  • また中国は首脳会談で「非核化」に言及しないまま北朝鮮との協力の強化を謳う(2025年9月)に至り、またコロナ禍を経て中断されていた列車運行・航空便の定期運用を再開させるなど(2026年3月)接近を強めているが、中国は北朝鮮への影響力を米国向けの外交カードとして、あるいは北朝鮮を米国の関心を分散させる「戦略的資産」として位置付けている。これらのことから朝中露の関係性は全方位的な「陣営」の形成よりは利害の一致に根差したものと見るべきといえる。

提言

  • 北朝鮮と中国・ロシアの関係性は積極的な枢軸とはみなしがたいが、国際秩序の動揺は各国をして影響力の拡大を企図させ、また秩序の動揺を目指した協調的行動は相互の理解として立場が一致している。また、特に対米牽制について利害が一致する部分では、連携をさらに強化させることが十分にありうる。北朝鮮制裁に関する国連安保理専門家パネルの解散(延長決議の否決:2024年3月)に代表される制裁体制の弱体化は、各国の利害が一致する「最大公約数」としてさらに昂進する可能性が高い。
  • 台湾有事は北朝鮮にとっても「巻き込まれ」のリスクと表裏一体であり、少なくとも現状で、北朝鮮がロシア派兵のような直接的介入を台湾有事において行う可能性は低いと考えられる。ただし特に中露の共同軍事訓練・演習に北朝鮮が何らかの形で参与する場合は、朝中露の思惑の違いと無関係に、「今日のウクライナが明日の東アジアになる」可能性を高めるシグナルとなる。北朝鮮が進める通常兵力の増強とあわせて注視される必要がある。
  • また、北朝鮮が核・ミサイル能力の向上を掲げる以上、技術的課題の検証のためにも、北朝鮮の文脈において追加核実験は必須のプロセスとして認識されていると見なければならない。ロシア・中国が国連安保理で新たな制裁決議に反対する(拒否権行使あるいは棄権)可能性が高い状況が北朝鮮のそのような認識を「後押し」することは確実であり、日本としては、経済制裁の実効性を確保するための取り組みを強化するとともに、北朝鮮の核実験が地域情勢のさらなる緊張を招くことでロシア・中国の国益に裨益しない点をインプットする必要がある。

3.米国・韓国の対応(対北政策をめぐる動向)

分析

  • 朝鮮労働党第9次大会において、北朝鮮は米国との(核保有国としての地位認定を条件とした)対話の意志を示し、また韓国に対しては「敵対的二国家論」をさらに高潮させて、一種の「予防戦争」も辞さない態度を表明した。
  • 第2次トランプ政権は、これまでの統合抑止から「優先順位の階層化」へと方針を転換しており、国家安全保障戦略(NSS:2025年12月)・国防戦略(NDS:2026年1月)では、2つの優先地域として「本土防衛・西半球」と「インド太平洋」(対中抑止)を設定している。優先地域では米国が主導し同盟国は増大した役割を果たすとし、「その他」の地域では同盟国が主導し米国が「重要だが、限られた支援」を行うと規定している。東アジアへのリソース配分は対中抑止に特化され、北朝鮮対応は二の次となる可能性がある。
  • このような「同盟関係のリセット」と軌を一にして、在韓米軍については、もはや対北朝鮮専用の軍隊ではなく、インド太平洋全域を対象とする機動的プラットフォームへと再定義されつつある。2025年12月には一部の空中騎兵大隊の解隊が決定しており、固定的な地上戦力からより柔軟な長距離打撃・ミサイル防衛網、あるいは有事の際の半島外への迅速展開を重視する姿勢を示唆している。また韓国(李在明政権)に対しては、在韓米軍が中国関連の地域紛争に関与する「戦略的柔軟性」には抵抗をみせているが、これが避けられない場合、韓国側が先端軍事技術の移転を求めることもありうる。
  • 他方、2025年NSSにおいては「北朝鮮の完全な非核化」の記述がなく、第2次トランプ政権が非核化からリスク管理へと対北朝鮮政策をシフトさせている可能性がある。ただし、日米・米韓・日米韓の文書・ファクトシートでは「北朝鮮の完全な非核化」は目標として維持している。
  • これらを踏まえると、第2次トランプ政権は(2026年11月の米中間選挙に向けた外交的成果を強調する観点からも)非核化を長期的な目標として維持しつつも、そこに至るための段階的アプローチという名目で北朝鮮との核軍備管理交渉を目指す可能性、あるいは南米・中東に比べて北朝鮮の優先順位を低く設定し、実質的に放置する可能性がある。
  • 韓国の李在明政権は「実用外交」のもと米韓同盟の強化と対北融和政策の両立を図っており、対米関税交渉を3,500億ドルの対米投資計画(内1,500億ドルは米国造船業への支援)で妥結させるとともに、その見返りとして米国から原子力潜水艦の建造・技術協力の実質的承認と2030年までの「戦時」作戦統制権(OPCON)の移管完了の確約を取り付けた(2025年11月、米韓首脳会談)。また、李在明政権は、北朝鮮との緊張緩和のため米韓合同軍事演習の縮小、中国との関係強化(非核化・不拡散への協力要請)を図っている。北朝鮮が「敵対的二国家論」を堅持するなか、自国の生存空間を最大化しつつ、対北朝鮮政策では主導的な役割よりも「ペースメーカー」として関与することを目指す動きと解釈される。

提言

  • 第2次トランプ政権の戦略は優先対象としてのインド太平洋と朝鮮半島を区別するとも解釈されるものであり、日本としては朝中露への対応、朝鮮半島有事と台湾有事への対応(複合事態)が必然的に「セット」となることをインプットし続ける必要がある。
  • 在韓米軍の戦略的柔軟性(地域化:対中抑止、第一列島線防衛のための活用)は朝鮮半島における抑止の枠組み(韓国への戦時作戦統制権返還、米韓連合軍司令部、在韓米軍、在日米軍、国連軍司令部)にも影響を及ぼすだけに、新たな「共同防衛」の構築過程では日本の意見を反映させることが必要になる。
  • また北朝鮮の軍事的脅威は通常戦力と核戦力が融合した脅威であり、したがって抑止態勢も通常戦力における抑止と核抑止の二本立ての構造を持つ。米国のNSS・NDSでは必ずしも整理されていないこの点を、日米・米韓間の合意文書では明記された「米国の拡大抑止へのコミットメント」と整合させる方向で、核協議グループ(NCG)や核・通常戦力統合作戦の作業を継続しなければならない。
  • 第2次トランプ政権の北朝鮮核問題への関心は核不拡散よりも核攻撃のリスクを下げることに置かれているが、北朝鮮の核・ミサイル開発の本質的な問題は、それが核不拡散体制を動揺させる点にこそある。日米・米韓間では朝鮮半島の非核化・北朝鮮の完全な非核化という目標が約されていることをベースに、米国との政策的協調のため努力しなければならない。
  • 第2次トランプ政権にとって、米朝交渉の外交的成果としての利用価値と交渉成功の可能性はともに(第1次政権期より)低下しているが、このことは逆に突発的な米朝交渉の実現、あるいはそれに対する韓国側の性急な呼応といった事態を否定するものではない。日本としては抑止と制裁・外交交渉のいずれも見据えた日米韓の意思疎通を維持しなければならない。

4.日本(日米/日米韓)としての対応―抑止・制裁・外交の「再設定」

分析

  • 安全保障(抑止)面に関しては、北朝鮮の核・ミサイル能力は、日本の既存の国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画の実現の速度よりも早いペースで向上している。また北朝鮮の軍事的能力の拡大は、いまや朝鮮半島を超えた北朝鮮の活動範囲の拡大を下支えするものとなりつつある。すなわち意図を能力によって裏付ける段階を超え、能力によって意図がさらに拡張する段階に入っているといえる。
  • 対北朝鮮経済制裁(制裁)に関しては、国連安保理を中心とした大きな枠組みは中露の消極的態度によって実効性が低下しており、また中露軍事協力及び中国の北朝鮮の非核化への一層の消極化も状況を悪化させている。さらに米国の一国主義的行動が、これに拍車をかける可能性を否定しがたい。ただし、北朝鮮は「制裁が存在すること」によって現実に経済的な影響を受けており、このことからは、北朝鮮が「敵視政策」の象徴として制裁を位置づけ、その緩和・解除を目指す戦術を取る可能性が示唆される。
  • 外交(対話)面に関しては、トランプ大統領がたびたび北朝鮮を核兵器保有国(nuclear power)と表現する一方、米政権は公式に北朝鮮の完全な非核化という目標を撤回していない。その背景には、朝露軍事協力とそれに便乗した北朝鮮のさらなる核・ミサイル開発が、朝鮮半島と北東アジアの軍事的緊張を高める危険性があることが認識されているとの事情がある。

提言

  • 上記の通り、北朝鮮の核・ミサイル能力の向上と状況の流動性・不確実性がともに高まる中では想定すべき事態も複合的であり、特に抑止・制裁・交渉(対話)の課題を相互連携させた上で同時並行的に取り組む必要がある。また、このような状況は、日米韓のいずれにとっても単独での影響力に限界があること、したがって抑止・制裁・交渉のいずれにおいても、各国が「基本単位」としての日米韓の枠組みをもって相対するときにのみ十分な実効性を発揮できることを意味する。
  • 安全保障(抑止)面に関しては、国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画の安保3文書を2026年度末までに改訂する予定であるが、それまでは、日本としては既定通り抑止力強化に向けた反撃能力のための技術開発及び装備品配備を急ぐとともに、日米・日米韓のより具体的な抑止体制・枠組みの構築を構想すべきである。同時に、日韓のより具体的な防衛協力を計画・実施すべきである。特に、米国からの日本の防衛支出増額要求を同盟の全体のアップデートの観点からとらえ、対応しなければならない。日米同盟および日米韓安全保障協力のなかで、北朝鮮に対する拒否的抑止態勢(対兵力打撃能力、ミサイル防衛能力、サイバー能力)をいかにして構築していくかについて3か国間で「すり合わせ」る必要がある。
  • さらに、日米韓の枠組みに、豪州やフィリピンを加えた多層的な協力を発展させ、台湾・半島「複合事態」への対処力を強化するとともに、米国の負担を分担しつつ、米国の離脱を防ぐためのミニラテラルな枠組みの輻輳化を図る必要がある、これは朝鮮半島と台湾海峡事態の連動(複合事態)に直面した際に日米韓の対応が一層複雑化する可能性に対するリスクヘッジにも寄与するものとなろう。
  • 以前から課題となってきた日韓物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向け、具体的な協力の経験を蓄積するべきである。同協定は象徴的な意味を持つほか、上記のような共同対処と相互運用の拡大を下支えする基盤となろう。

    (※抑止に関しては「3.米国・韓国の対応」の「提言」も参照。)

  • 制裁に関しては、制裁が非核化を促すような実効性を保つことを最優先課題に据えなければならない。安保理決議の維持、国連安保理専門家パネルを代替する多国間制裁監視チーム(MSMT)の活動強化(ロシア経由の技術・資金移転、海上ルートを通じた「瀬取り」、暗号資産のサイバー窃取など違反行為の周知)、北朝鮮以外の第三国の主体に対する制裁と違反行為の監視支援は、いずれも日米韓が共同実施することで、より実効性を向上させることが可能となる。
  • また北朝鮮による違法行為(たとえばハッカーによる暗号資産のサイバー空間上での窃取やIT技術者の就労)の対象が特定の国に限定されないこと、そして人権侵害行為(拉致問題を含む)が普遍的価値観にかかわるものであることについて、国際的な関心を惹起し続ける必要がある。関係国と連携し、国連における北朝鮮人権状況決議の共同提案、シンポジウムの実施等を行い、国際的な関心を維持するとともに、北朝鮮に対する強いメッセージを発信し続けなければならない。
  • 北朝鮮との交渉(対話)に関しては、特に北朝鮮が対米交渉自体に対してより積極的になっている点を念頭に、突発的な形での米朝交渉が行われる事態への対応が必要となる。特に交渉の成果としての「ディール」が優先され、制裁が一方的に緩和される、あるいは核兵器そのものに踏み込まず、日韓の安全保障上のリスク軽減にはつながらないような合意がなされる危険性について、日米韓でコンセンサスが形成されることが必要になる。特に、朝露軍事協力及びそれに便乗した北朝鮮のさらなる核・ミサイル開発が、戦争を望まないトランプ大統領の意に反して、朝鮮半島及び北東アジアで軍事的緊張を高揚させる危険性があることを常時メッセージとして発信しなければならない。
  • また交渉過程においては、現実としての北朝鮮による核兵器保有に外交的に対応すべく、核リスク低減や核開発凍結が必要な措置となりうるが、あくまでそれらが北朝鮮の非核化プロセスの一部として位置付けられるとの原則(核不拡散体制や他の核拡散問題へ影響も念頭に置いた)が維持されねばならない。また交渉が米国主導になるにせよ、日本・韓国はステークホルダーとして、交渉プロセスに拉致問題を含む懸案を適切に反映させねばならない。それをともなってこそ、「ディール」に対する広範な世論の支持も期待しうる。
  • このような「すり合わせ」は首脳外交・閣僚外交・実務者協議の様々な機会を通じて行われるべきであるが、特にキャンプ・デービッド合意で約された日米韓「三か国調整事務局」を活用すれば、同合意の制度化にも寄与するものとなろう。
  • また、核不拡散および紛争管理は、本質的には日米韓のみならず周辺各国の関心事であり、各国が関与すべきイシューとなる。ウクライナ侵略の状況、失効した新STARTに代わる核軍縮条約交渉の行方も注視しつつ、中国・ロシアへの働きかけも排除せずオプションに含めることが必要である。
    (2026年3月31日校了)