「トランプ連合」の接着剤としての反「エスタブリッシュメント」と反「ウォーク」
共和党の内部をつなぐ「トランプ連合」の2つの接着剤は、反「エスタブリッシュメント」、反「ウォーク(注1)」(必ずしも「反共」ではない)に収斂しつつある。共和党支持層はブッシュ息子政権前半まではブッシュ父の時代のように「レーガン連合」(小さな政府の「財政保守」「キリスト教保守」「ネオコン」)が形成されていたが、イラク戦争で「ネオコン」が肥大化し、戦費増大や海外介入を嫌悪したリバタリアンが金融危機のウォール街救済を契機に共和党支持層から離れていた。「トランプ連合」は、「ネオコン」を追い出し、リバタリアンを再度迎え、ブッシュ政権末期に不信感を抱き出していたキリスト教保守を岩盤支持層化している。いわば、一部の集団をクビにして、離散気味だった「連合」をリニューアル再結成させたのが、トランプ政権2期目の「トランプ連合」であると言える。新たな労働者層の参加とリバタリアンの復帰は「大きな政府」問題で軋みを引き起こすかと思われたが労働者の社会保守性と、リバタリアンの海外非介入、ワクチン問題を含む反エスタブリッシュメントの濃度がかすがいとなり、就任100日では表面上、「連合」は維持されているかのように見える。
2024年11月の選挙後から共和党の内部への聞き取り調査を断続的に続けているが(ワシントン以外は現時点遠隔)、特徴的なことを列挙しておきたい。
第一に、共和党や保守主義をどうしたい、こうしたいという未来志向のビジョンは決して出てこないことだ。全てリアクショナリー(受け身)で共和党のトランプ化への適応的な感想に留まっている。
トランプ支持の労働者層を受け入れる上で、旧来の共和党支持者の都合の良い頭の切り替えとして、興味深い反応の一つに、反「ウォーク」の絆が顕著である。トランプ支持の労働者は、一義的には製造業の低迷や生活苦でトランプにすがったという理解になっているが、共和党支持者の間では必ずしもこの理解の限りではない。「保護貿易」に共鳴してトランプ連合に参加しているわけではなく、民主党が左傾化し「文化リベラル」(彼ら共和党関係者はウォークネスという言葉を好む)と共存できず、民主党を逃げ出してきた可哀想な人たちなのだ、という解釈である。いわば民主党からの社会争点「難民」である。だが、「彼らを文化的な保守性を共有する人たちだと思って警戒心を持たずに受け入れていたら、労働者が増えることでいつの間にか共和党が変容している。現在の党支持基盤の形成は計画的ではなく偶発的に進展している」と、古参の共和党議会補佐官は述べる。
ニクソン政権から長年共和党政権をワシントンで観察している保守系ジャーナリストは、「党の性質は変容するもので、共和党は過去に何度も変身を遂げている」と指摘する。パット・ブキャナン、ロス・ペローを例に挙げ、「反移民、保護貿易などのイデオロギーは共和党に目新しいものではない」と唱える。だが、ブキャナンやペローは共和党予備選を勝ち抜けなかったことも忘れてはならない。党内のフリンジか、二大政党に参加しない第三候補的な存在だった。かつて彼らと「改革党」内で共闘する第三党的存在だったトランプは、今や共和党の「顔」である。何度も共和党予備選で堂々と勝利し、共和党の信任を得ている。かつては、イデオロギーとしての保護貿易が共和党周辺に部分として存在しただけで、統治レベルで外交政策に保護貿易が適用されるのは、戦後は初めてである。「これが保守政権と言えるのか」という筆者の問いには概ね共和党関係者は歯切れが悪い。ここから先は考えない、答えない、というのが今の共和党のスタンスである。トランプを大讃美もしないが、トランプの共和党を何か小理屈をつけて必死に受け入れようともがいている。
他方、現在の共和党内に明確なのは、イラク戦争加担者切り捨てである。メディアのトランプ批判役と引き換えにイラク戦争の罪の「恩赦」を与えられたかのようになっているジョン・ボルトン元国家安全保障担当大統領補佐官と異なり、リベラルメディアに出ないディック・チェイニー元副大統領は対リベラルでも名誉回復ができず、公的空間での「居場所」がない。共和党内でトランプに反旗を翻した者は総じて袋叩きであり、MAGA派ではない共和党穏健派も、「チェイニーの娘はRINO(名ばかりの共和党員)。父親はもう引退の年で娘に寄り添ったのでは。立派な面と納得できない面が両方ある人だった」と酷評である。「トランプ連合」に通底するのは選挙中から変わらない強いトランスジェンダー嫌悪で、「同性愛はいいがトランスジェンダーだけは認められない」(同共和党穏健派議会補佐官)と、大多数がトランプの反トランスジェンダー讃美であった。チェイニーが共和党内での信頼を激減させていることの理由に、娘のレズビアン問題があり、キリスト教右派まで敵に回したことも関係している。
トランプ擁護の奇妙なロジック
第二に、支持者レベルではトランプの突飛な発言や政策を「交渉のため」の「短期的行動」だと信じる姿勢は現時点まだ大きく崩れていないことだ。
「伝統的な共和党支持者は、MAGAやトランプ支持者とはもちろん異なる。トランプに反対するようになった共和党支持者を除いても、伝統的な共和党支持者の一部は常にトランプに対して懐疑的だった。これが2024年の指名争いが激化した理由の一つ。それでも、トランプが機能しているように見える限り、トランプに従う用意がある。同様の論理で、右派の一部は関税に懸念を抱いているが、現時点ではそれがトランプの交渉戦略の一部だと感じている。トランプが何かを言ったりしたりすると、左派が激しくそれを批判する。そのおかげで(右派内で応援され)うまくいくというパターンは、今ではかなり一般的になっている。この作用で、トランプに懐疑的な人々でさえ、左派の煽りに惑わされず、様子見の姿勢を取っている」
左派から集中砲火になる姿がトランプには政策への賛否から目をそらす道具として好都合だという、この共和党幹部の解釈も背後に透けるのは反「ウォーク」の接着剤である。民主党が左傾化しておらず、共和党支持層が抱く、社会全体の左傾化、いわば「ウォークネス」への恐怖心がそもそも存在していなければ、トランプ支持は維持しにくい。
総じて共和党支持層のトランプ政権への採点は激烈には辛くない。支持は下落し、散発的に争点によって議会重鎮から苦言めいたものがメディアで報じられるが、部分的に留まっている。州の自治を尊重した上での連邦政府職員の大量解雇やインテリジェンス部門叩きなどは、「小さな政府」派の心をくすぐるし、「政府機関の隠蔽」への不信感や反発が強いリバタリアン好みで、「反エスタブリッシュメント」のかすがいが効いている。言わば、各支持層を短期で喜ばせるつまみ食いのパッチワークである。
「現時点では、トランプ政権は順調に進んでいる。民主党や左派からの予想された批判にもかかわらず、世論調査では依然として過半数の有権者がトランプを支持している。教育省(DOE)が無意味だとは言わないが、地方の学校に過剰に介入していることは間違いない。教育省が学校での分離政策の廃止を支援したことは確かに良いことで、連邦資金を他の政策に結びつけることは、一部の状況下では有益な措置となる可能性がある。しかし、左派の政策を押し付ける点では行き過ぎている。DOEは廃止されることはないだろうが(この時点で発言の主はトランプを甘くみていた)、プログラムは縮小すべきであり、同時に学校への追加資金提供は継続すべき。詳しく追跡していないが、中央情報局(CIA)がアメリカ国際開発庁(USAID)の活動に深く関与していると理解している。他国での機関やイベントへの資金提供は、CIAのアクセス手段となっている。その点では、USAIDのプログラムを縮小することは諜報活動に悪影響を与える可能性がある。ただし、これまで公表された多くのプログラムには、公的な正当性がほとんどないか、全くないようだ。DOEと同様、USAIDやCIAの関与は、その本来の使命から逸脱しすぎている可能性がある」
この発言主は共和党穏健派の大学教授で、決して「陰謀論」に心酔した人物ではない。そもそも、トランプ支持者はリバタリアンを中心に高学歴者が意外と多い。高IQ組織のMENSA内にトランプ支持のネットワークがあり開業医、弁護士などが中心である。その多くが旧ロン・ポール支持者で、共和党に「帰ってきたリバタリアン」である。新型コロナウイルスへのワクチンをプライバシー権に抵触すると考える彼らは厚生長官にケネディを就任させた1点でトランプ政権に満点を与えた。
議会演説にも好意的な声しか聞かれない。一例として農業州アイオワ州の共和党委員の声を紹介する。
「昨夜のトランプ大統領の議会演説は非常に興味深く、また非常に長かった!演説中の民主党議員はまるで子どものようだった。ある下院議員がオバマ大統領の一般教書演説の最中に『この嘘つき』と叫んで大批判を浴びたことを覚えているだろうか? いまや民主党は、トランプが演説しているとき、あらゆる子どもじみたふざけた行動に出る。少なくとも、彼らは「因果応報」という教訓を学んだはずだ。言い換えれば、彼らはハードルを下げ、共和党が次に大統領になる民主党議員に同じようなことをすることを期待しているのだ。トランプは演説の中でウクライナの問題に触れ、和平交渉の始まりとまではいかなくても、少なくともレアアース鉱物の取引に向けて事態は動いている。トランプは以前あなたが質問した関税と農家についても言及した。彼は、短期的には痛みはあるかもしれないが、長期的には価値があると繰り返した。市場は関税について神経質になっている(ダウはこの共和党委員とのやり取りが行われた直近2日間で1300ポイントほど下落)が、事態が比較的早く落ち着くのであれば、農民は全体としてトランプにつくと私は思う。彼らは、農業製品や市場に打撃を与えるほどの関税措置を望んでいないことは確かだが、一方で、これは長期的に見れば彼らに大きな損害を与えない交渉戦略だと考えている」
「短期的な痛みを伴うが長期的な利益につながる可能性がある」「何かをやると言ったからといって、必ずしもそうなるとは限らないということだ。トランプは言ってみればセールスマンだ。いわば、壁にいろいろなものを投げつけて、それがくっつくかどうかを見るようなものだ」という声は昨年11月の大統領選挙直後には多く聞かれ、現在も共和党員の中で完全に結論は出ていない。答え合わせは来年の中間選挙まで引っ張られるだろう。
確かに、トランプ応援インフルエンサーは「相互関税」による株価急落を嫌悪したが、これも根本的なトランプ批判になり得なかった。ユダヤ系で宗教右派のベン・シャピロ、リバタリアンのジョー・ローガン、デーブ・ポートノイ(後者2名はいずれも社会的にはリベラルで、麻薬合法化賛成、プロチョイス的傾向)などのトランプ関税批判は、富裕な彼らが投資家でもあり、マーケットに敏感だったことによる部分的な批判だった。株価が回復したことで彼らと彼らのフォロワーのトランプ批判は収まった。
「孤立主義」をめぐるニュアンス
第三に、保護貿易は不可逆的だと認めながら、「孤立主義」という言葉を使いたがらないことだ。トランプ関税への不満を産みの苦しみとして受け入れる姿勢、この経済は民主党と共和党エスタブリッシュメントの悪政のせいであるというスケープゴートが土台になっている。2024年11月の大統領選挙直後に、すでに引退している古参の共和党スタッフは以下のように見通していた。
「自由貿易の状況には戻らないと私は感じている。商品には特定の関税がかかるだろう。基本的に、もし重い関税がかけられると、アメリカの中流から中流以下の人々に影響を与えることになる。関税がかけられるのは、そのような社会階層が消費するような商品だ。トランプ再選を支えた人々は、その98%、いや98%ではないかもしれないが、かなりの割合がその範疇にいる。彼らは富裕層でもなければ、超貧困層でもない。私のように、この4年間で見過ごされてきた人々だ。そして、それは重要な状況になると思う」
保護貿易路線は不可逆だが「孤立主義」ではないと唱える。以下のような考え方の旧レーガン主義者もトランプを支持していることに「連合」の再編の片鱗が見えなくもない。
「アメリカは世界の大国であるがゆえに、その座を狙う勢力が存在する。ロシアがあり、北朝鮮があり、イランがあり、中国がある。関与しないわけにはいかない。世界の外交政策に一定のレベルで関与しなければならない。孤立主義の時代は終わった。私自身は、世界情勢に関与せずに傍観している余裕はないと思っている。ウクライナは重要だと思う。ロシアの膨張に対する防波堤を見つけるというのは、他に誰ができるのか?それが問題だ。我々は主導権を握っている。レーガンがよく言っていたように、世界に関する限り、私たちは「丘の上の光り輝く町」なのだ。民主主義はここでは大きな問題だ。北朝鮮、ロシア、イラン、そして中国もそうだが、民主主義とは彼らが破壊したい概念なのだ。私は、民主主義国家である日本が世界で唯一の民主主義国家だとは思わない。私たちに比べれば非常に小さいとはいえ、他にも多くの民主主義国家がある。世界におけるプレゼンスを維持することは重要だ。世界の舞台から退くべきだとは思わない。台湾への軍事侵攻は不安。自分が大統領なら守ると明言したい。トランプは経済的に台湾の重要性を理解している。ただ、ウクライナとの連鎖論(ウクライナが負けると中国の台湾侵攻を促す)には私は同意しない。両岸関係の緊張はペローシ訪台を強行した民主党政権のせいだ」。
トランプ政権の外交部局内では「対中優先派」は発言力を縮小させているが、共和党支持基盤全体としては、イスラエル支持と同様に対中強硬と台湾支持は変わらない。ただ、トランプの主張する「台湾はアメリカから半導体技術を移植した」という説を信じている人は台湾支持派にも多く、テクノロジーや技術史を正確に理解している人は少数派である。
共和党は崩壊している?保守主義の行き場はどこに?
筆者の聞き取りの範囲では、匿名でもオンレコでトランプ批判を展開する声は少ない。だが、オフレコが条件であれば、政策、人格の双方でトランプ批判は選挙前から党内に渦巻いている。特にJ.D.バンス副大統領への批判は根深い。以下は保守系ベテランジャーナリストの弁である。
「この人物(バンス)はよくわからない。この街(ワシントン)の政治家は、大体が1人を間に挟むと知り合いだった。だが、この人物だけは1人挟んでも辿り着けない。全くどんな人かわからない恐怖がある」
トランプは何十年もメディアの寵児だった。トランプを人気者にすることにも加担した(ニューヨーク出身でトランプと親しかった)CNNのラリー・キングが「(トランプは)人種差別主義者ではない。あれはメディア向けに演技している」と述べたことがある。トランプ政権2.0の政策を知ったら故人となったキングも悠長なことを言っていられなかっただろうが、トランプの素性を良く知る人たちは裾野に多く存在し、分析も豊富である(注2)。その点、トランプ以上に本質的な意味でMAGA的だとされるバンスの人物評はワシントンに極端に少ない。賛否問わず評価の少なさが、トランプにマルコ・ルビオ国務長官と後釜競争をさせられているバンスに吉となるか凶となるか未知数である。
今の共和党穏健派はMAGAとの関係に配慮し、MAGAへの批判は共和党全体では語らない。そんな中、トランプ批判を共和党内で行う数少ない著名人、保守系批評家のS.E.カップはトランプ政権100日で批判のギアを入れ直した。以下のYouTube番組での発言は鮮烈であった。
「共和党は崩壊している。共和党がワシントンの3翼を統治し、かつてなくパワフルなので、印象には反するかもしれない。しかし、(政党としての)共和党は崩壊している。トランプが保守に関心がないからと一度でも保守主義を棄ててしまったら、根本的なものを失ってしまう。トランプとトランピズムに近くなればなるほど、共和党としてのアイデンティティは失われる。トランプの先には何もない。反保護貿易推進のように、保守主義の原理原則を放棄すれば、保守主義の原理原則を信奉する政党に惹かれていた人々の信頼は喪失する。もはや誰も保守主義を代弁しない。今、共和党にいて政党に参加しているメンバーだとすれば、それはトランプを支持しているからだ。トランプが去ってもトランピズムは生き残るが、トランプはいなくなる。するとアイデンティティを喪失する。もうそれは保守主義ではないからだ。保守主義は大きな連合で、ネオコン、リバタリアンなど多様だが、保守主義がかすがいだった。今のかすがいはトランプだ」
「私がかつて愛した共和党はない」「この党はトランプ以外のアイデンティティがない」「トランプと共和党に初めて投票した人は豊かになれるという約束を信じて投票した」(注3)が、期待された経済、移民、犯罪でトランプ政権の成果が出ているとは言い難いとして、中間選挙で審判が下されると述べた。
カップの不満は民主党に向く。
「関税が経済を立て直す答えではないなら、何なのか?DOGEが答えではないなら、民主党は政府の無駄遣いを削減する計画は何だと考えているのか?正当な手続きを経ずに不法移民を強制送還することが憲法違反なら、民主党は国境の危機をどのように解決するつもりなのか?犯罪と闘うために法執行機関を軍事化することはディストピア的に聞こえるが、民主党は暴力犯罪者を街から排除するために何をしてくれるのか?」(注4)
「新しい民主党のニューディール政策」がどこにあるのか、中間選挙に向けて結束を促す大胆な政策はあるのかとカップは問いただす。「トランプの100日は、恐ろしく悲痛で恥ずかしいものばかりだったが、その間に民主党が何か意味のあることをしたとは言い難い」
ビル・クリントン元大統領の参謀で、民主党系戦略家のジェームズ・カービルは何もしないのが、民主党に最良の戦略だと提唱した(注5)。
「共和党に減税、メディケイド削減、フードスタンプ削減を推し進め」させ、「共和党の崩壊をアメリカ国民に見せつけ、彼らが私たち(民主党)の支援を必要とするまで待つ」という提案である。トランプにメチャメチャにさせるまで放置するという案だが、いくつかの点で問題がある。第一に、カップが指摘したように、民主党の無策を印象付ける逆効果だ。第二に、トランプの「短期的な痛み」の原因は民主党政権だという理屈を有権者が受け入れれば、関税の「痛み」は全て民主党に向きかねない。第三に、カービルの視野の狭さを露呈しているが内政では中間選挙で逆転すれば傷は最小限にとどめられるかもしれないが、大統領に裁量が大きい外交では不可逆的なダメージを生じさせることへの責任問題だ。そして第四に、カービルの呼びかけに応じるのは民主党の主流派だけだという問題だ。
すでに熱心な全米キャラバンを展開する民主党系および民主党左派のバーニー・サンダース上院議員とアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員のメディアでの「活躍」は、「ウォーク・フォビア」症候群をいっそう引き起こし、「トランプ連合」の接着を強化させている。共和党穏健派は誰もが口にする。「民主党が穏健化しない限り超党派は組めない」「アメリカがウォークネスに席巻されるくらいなら、鼻を摘んでトランプに投票する」
民主党が分極化上等で左傾化路線の徹底化で議席を大量に取れるのであれば、トランプ政権と共和党にブレーキをかける上では短期的にはそれも1つだろうが、経済ポピュリズムとアイデンティティ政治の路線対立が棚上げされたままで、はたして左派内分裂は抑止できるのか。だが、左派の台頭自体が「トランプ連合」のガソリンである皮肉は消えない。中間選挙に向けた民主党の方向性とトランプ政権の行方は連動している。
注1:2010年代以降、民主党系の急進左派的な「党外」グループは、運動としてはBLM(ブラック・ライブズ・マター)、選挙活動としては2016年以降バーニー・サンダース支持派として結束している。黒人運動でありながら単なるレイシズムへの抵抗運動ではなく、フェミニズムやLGBTQなどセクシュアリティの解放に支えられた重層的な運動。彼らを「ウォーク・レフト(woke left)」と呼ぶこともある。woke(目覚め)とは社会正義や人種正義を訴える活動家を指す呼称として浸透していた。ただ、「ラディカル(急進・過激)」と同じように「ウォーク」は、保守側から中傷的ニュアンスで用いられることが多い。
注2:Larry King "Donald Trump Is Not A Racist" | MSNBC, April 13, 2016
<https://www.youtube.com/watch?v=C_knRyu2ol8>
注3:S.E. Cupp, Sounds the Alarm on GOP Future "There's nothing past Trump.", May 5, 10.
<https://www.youtube.com/watch?v=7KFrLLVAZbI>
注4:S.E. Cupp, Criticizing Trump isn't enough; Democrats need to get moving on their own plans, Chicago Sun-Times. May1, 2025.
注5:James Carville, "It's Time for a Daring Political Maneuver, Democrats", New York Times, Feb. 25, 2025