イベント実施報告

【プレスリリース】第5回東京グローバル・ダイアログ(TGD5)

2024-02-29
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公益財団法人日本国際問題研究所は、2月28日(水)及び29日(木)、第5回東京グローバル・ダイアログ(TGD5)を都内(於・オークラ東京)において開催しました。

1日目のオープニングでは、岸田文雄内閣総理大臣にご挨拶いただき、上川陽子外務大臣に基調講演を行っていただきました。「戦略年次報告2023」に関するラウンドテーブルでは、2024年2月に日本国際問題研究所が発表した同報告書が示す現状分析や提言をもとに、佐々江賢一郎理事長の司会により、海外の有識者6名と議論を行いました。2日目は、6つのテーマでパネル・ディスカッションが行われ、国内外の有識者・専門家が活発な議論を交わしました。

本年は、初めて全セッションを会場とオンラインによるハイブリッド形式で実施し、世界各地から約800名の参加登録を得ました。

1.概要

(1)日時

2024年2月28日(水) 17時から19時20分

2024年2月29日(木) 9時から18時30分

【プログラム】 https://www.jiia.or.jp/TGD/tgd5/

(2)場所

The Okura Tokyo(オークラ東京)(東京都港区)及びオンライン

(3)参加人数(会場参加はご招待のみ、会場参加・オンライン参加ともに事前登録者概数)

会場参加:延べ360名超

オンライン参加登録:約800名

2.登壇者:オンライン登壇を含め、13か国と1地域から計約30名が登壇

【日本】 ※ご登壇順(当研究所職員を除く)

岸田文雄 内閣総理大臣

上川陽子 外務大臣

森聡 慶応義塾大学教授

松原実穂子 NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト

西川和見 経済産業省大臣官房参事官・経済安全保障室長(兼)貿易経済協力局総務課長

鈴木一人 東京大学教授

兼原敦子 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

中川浩一 日本国際問題研究所客員研究員

彦谷貴子 学習院大学教授

佐々江賢一郎 当研究所理事長、元駐米大使

小谷哲男 日本国際問題研究所主任研究員、明海大学教授

【海外】 ※姓によるアルファベット順

ジャスティン・バッシ オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)所長(豪州)

ヘンリー・S・ベンスルト 駐トルコ・フィリピン大使(フィリピン)(オンライン参加)

カール・ビルト 元スウェーデン首相、Kreab Worldwide副会長(スウェーデン)

ビル・エモット 国際問題戦略研究所(IISS)理事長(英国)(オンライン参加)

マシュー・グッドマン 外交問題評議会(CFR)地経研究グリンバーグセンター所長(米国)(オンライン参加)

アレックス・グレイ American Global Strategies LLC CEO、元米NSC首席補佐官(米国)

ジョン・ハムレ 戦略国際問題研究所(CSIS)所長(米国)

ハン・ソクヒ 国家安保戦略研究院(INSS)院長(韓国)

ノラ・ファン 台湾遠景基金会研究員(台湾)

賈慶国(カ・ケイコク)  北京大学教授(中国)(オンライン参加)

ビラハリ・コーシカン シンガポール国立大学中東研究所会長(シンガポール)

ミシェル・リー ワシントン・ポスト東京支局長(米国)

アリーナ・ミロン アンジェ大学教授、FAR Avocats共同設立者(フランス)

ダニエラ・シュヴァルツァー ベルテルスマン財団理事(ドイツ)

H. K. シン デリー政策グループ(DPG)所長、元駐日インド大使(インド)(オンライン参加)

アルフレッド・スーンズ ユトレヒト大学名誉教授(オランダ)

王輝耀(オウ・キヨウ) 全球化智庫(CCG)創設者兼理事長、元国務院参事(中国)(オンライン参加)

3.成果

(1)2月28日(水)

①『戦略年次報告2023』に関するラウンドテーブル

  • 『戦略年次報告2023』では、世界が、ウクライナ戦争、米中競争、中東における危機という「三正面」に加え、米国内の分断という問題に直面していること、そしてこれらの問題が、気候変動を始めとする地球規模課題の解決や、機能不全を起こしている国連安全保障理事会などのグローバル・ガバナンス機関の改革を進める上での取組みのための障害となっている現状を詳述しました。このエッセンスをベースに議論が進められました。

  • 11月の米国大統領選挙の結果、トランプ候補が再び政権に返り咲く可能性も踏まえつつ、各登壇者がそれぞれの視点から、地政学的影響及び、対米外交の行方を議論しました。また、米国史上に時折見られる、米国の「内向き志向」が再び台頭していることに対する懸念が表明されるとともに、第一次トランプ政権の際の経験を踏まえた対処の在り方が議論されました。

  • スウェーデンによるNATO正式加盟が成ったことを受けて、その戦略的意義についても、欧州からの登壇者を中心に、今後の欧州全体の安全保障へのインプリケーションが議論されました。インド太平洋に関しては、AUKUSやQUADに言及しつつ、グローバルな安全保障を維持するための同盟とパートナーシップの在り方について登壇者の考えが披瀝され、かみ合った議論が展開されました。

②オープニング

  • 佐々江理事長が挨拶し、世界各国からの参加者に歓迎の意を表しました。また、世界は動乱の渦中にあり、民主主義及び国際社会の叡智が試されているとした上で、東京発の国際的な対話の場となった当ダイアログが、当代一の有識者を集め、議論を喚起することは重要であるとして、4年ぶりの全セッション対面形式での開催の意義を強調しました。

  • その後、岸田文雄総理大臣にご挨拶いただき、上川外務大臣に基調講演を行っていただきました。

【ご参考】

(2)2月29日(木)

①パート1

  • 「米中競争とインド太平洋」とのテーマの下、「政治・安全保障」及び「経済安全保障」の2セッションが行われました。

  • 「政治・安全保障」では、地域情勢がより複雑化するインド太平洋を舞台に、米中関係に焦点を当てた議論が行われ、米中のいずれも互いをアジア太平洋から押し出すことができないことから、両国関係のマネージメントが重要であることが表明されました。台湾をめぐっては、中国・台湾のいずれも挑発的な行動は慎むべきこと、中国は米国の軍事力とその同盟国との結束力を見誤るべきでないといった点が強調されました。また、台湾有事発生が朝鮮半島に与える影響についても議論が行われました。

  • 「経済安全保障」では、まずは「経済安全保障」が何を意味するのかについて、各登壇者の立ち位置を含めて突っ込んだやり取りがありました。また、米中競争を背景とした各国の戦略的優位性確保に向けた政策や、国際的な連携、経済の安全性確保のための取組み、急務となるサイバーセキュリティ対策などを念頭に、経済安全保障をめぐる諸課題と見通しについて意見が交わされました。

②パート2

  • 「安全保障環境の変化と日本の対応」 とのテーマの下、「国家安全保障戦略と今後の課題」及び「領土・主権と法の支配」の2セッションが行われました。

  • 「国家安全保障戦略と今後の課題」では、パート1でなされた議論を引き継いで、中国が、東アジアのパワーバランスが中国有利にシフトしていると見誤るリスクがあること、これが中国の台湾侵攻を誘発する可能性について議論されるとともに、そのような誤算を惹起しないためにも、ウクライナ正面における自由主義陣営の支援・連携が重要であるとの点が強調されました。同様に、ロシアと北朝鮮の関係が軍事協力に発展しており、これが地域の平和と安定に脅威をもたらし、日米韓の三国間の連携強化による抑止が必要となっている点が指摘されました。トランプ候補が米大統領に選出された場合についても議論がなされ、QUADやAUKUSといったインド太平洋におけるアーキテクチャーを通じた軍事的連携強化の政策は継続されるとの見通しが示されました。

  • 「領土・主権と法の支配」では、一方的な力による現状変更の試みによって国際社会における「法の支配」の貫徹が危ぶまれている中、特に領域と主権をめぐる問題において「法の支配」が機能するために、国際社会はいかに対応すべきかについて、国際紛争の司法的解決手段や南シナ海紛争、一方的制裁等を題材にとり、国際法的観点から日本、フィリピン、フランス及びオランダの有識者が詳細に考察を加えました。

③パート3

  • 「~ウクライナ、そして中東~紛争頻発時代の到来と国際安全保障・協力の行方」とのテーマの下、「頻発する紛争:我々はウクライナ・中東・アジアの「三正面」とどう向き合うのか」及び「国際安全保障と協力の行方」の2セッションが行われました。

  • 「頻発する紛争:我々はウクライナ・中東・アジアの「三正面」とどう向き合うのか」では、ウクライナの敗北・ロシアの勝利に終わらないようなシナリオをいかに創出するのかについて突っ込んだ議論が行われました。「三正面」への対応の要は、西側諸国の支援が最大限の投影されるような国家間の連携とコミュニケーション強化であるとの意見、ウクライナでの妥協はインド太平洋における法の支配の崩壊に直結するとの見解が示されました。中東における中国の勢力拡大に対する憂慮が示されるとともに、台湾有事を抑止するための対中メッセージングの在り方についても考察が加えられました。

  • 締めくくりとなる「国際安全保障の協力と行方」では、各登壇者に対し、今次ダイアログでの議論を振り返り、どのような教訓を引き出せるかとの質問が投げかけられ、そこから、混迷を深める世界の中で日本が果たすべき役割、いかなるパートナーシップを構築すべきかについて熱を帯びた議論に発展しました。さらに、4月に予定される岸田総理大臣の訪米に向けて、どのような成果を期待するかについても、登壇者の意見が披露されました。

④クロージング

  • 佐々江理事長が2日間の議論の成果を振り返って明らかになった「動乱の世界」の諸相、「三正面」の各地域に関してなされた議論の概要ついて述べるとともに、今後各国がとるべき道筋について総括的に述べました。【「閉会の辞」の要点はこちら


パート1:米中競争とインド太平洋 (1) 政治・安全保障

パート1:米中競争とインド太平洋 (2) 経済安全保障

パート2:安全保障環境の変化と日本の対応 (1) 国家安全保障戦略と今後の課題

パート2:安全保障環境の変化と日本の対応 (2) 領土・主権と法の支配

パート3:~ウクライナ、そして中東~紛争頻発時代の到来と国際安全保障・協力の行方 (1) 頻発する紛争:我々はウクライナ・中東・アジアの「三正面」とどう向き合うのか

パート3:~ウクライナ、そして中東~紛争頻発時代の到来と国際安全保障・協力の行方 (2) 国際安全保障と協力の行方

クロージング