国問研戦略コメント

戦略年次報告2020:概観 インド太平洋の今日と明日:戦略環境の変容と国際社会の対応

2021-02-09
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2020年は、世界がコロナ禍に直面する中で、2019年の戦略年次報告が指摘した米中の対立と戦略的競争が、軍事・安全保障から先端技術、サプライチェーンの支配、さらにはコロナ対応を巡るナラティブに至るまで、あらゆる分野で一層激化した1年であった。この対立の中で、ルールに基づく国際秩序は一層厳しい試練に直面し、第二次世界大戦後に築かれた国連を中心とするマルチラテラリズムの枠組みは、米国のリーダシップを失って深刻な機能不全に陥った。

国際社会が急速に拡大した新型コロナウイルス感染への対応に苦しむ中で、中国は法の支配や領土問題に関する一層強権的・高圧的な内外政策や、「一帯一路」などの従来の経済構想に加えてコロナ対応を通じても影響力拡大の動きを進め、米国がこれに対抗する構図が深まり、インド太平洋は分断と競争の大洋となる様相を深めている。こうした戦略的環境の変容の中で、日本が数年来唱えてきた、ルールに基づき「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)というビジョンへの支持や類似のビジョンの表明が相次いでいる。2020年にはまた、日米豪印4か国の協力枠組み(QUAD)が顕著に緊密化し、この枠組みに参加する4か国の間の個別の協力も強化された。一方で、東アジア包括的経済連携(RCEP)が合意されるなど、中国を含む地域協力の枠組みにも進展が見られた。
「戦略年次報告2020」の本章は、2月25-27日に開催される第2回東京グローバル・ダイアログ(TGD2)の次のセッションにもリンクしています。

戦略年次報告2020に関するラウンドテーブル   日時: 2/25(木) 18:15-19:45
クロージング全体会合:インド太平洋の明日と国際社会の対応   日時: 2/27(土) 11:00-13:00