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経済・技術安全保障ウェビナー・シリーズ 第13回「日本の防衛産業が抱える基本問題と解決策-国際競争力の向上をめざして」(村山裕三 同志社大学 名誉教授)

2023-02-01
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日本の防衛産業では、次々と関連企業が市場から撤退するなどの産業技術基盤の弱体化が進行しています。日本国際問題研究所軍縮・科学技術センター(以下、「当センター」)は「経済・技術安全保障ウェビナー・シリーズ」第13回会合を2023年2月1日に開催し、報告者に村山裕三同志社大学名誉教授をお招きし、「日本の防衛産業が抱える基本問題と解決策-国際競争力の向上をめざして」と題して、その根本的な原因を探るとともに、解決の方向性をご提言いただきました。

はじめに、防衛産業をめぐって顕在化している問題について、①企業の防衛市場からの撤退、②実績が上がらない装備品輸出、③防衛向け研究開発を拒否する大学、④「防衛ムラ」中心の旧式研究開発体制、などの点を指摘されました。

その上で、これらの問題が生じる根本的原因が説明されました。第一に、日本の防衛産業は「産業」として成立していないと指摘されました。特に日本の防衛産業が生産する装備の多くは「使われない兵器」であり技術改善のサイクルが回っていない点、日本の防衛市場はコスト削減インセンティブが働かないシステムになっている点が指摘されました。第二に、日本の防衛産業は世界から2周遅れ―冷戦後に世界的な防衛産業の再編があったものの、日本ではそれが起こらず(1周目)、さらには米国や中国などと比較して優れた民生技術が防衛装備に本格的に活用されていない(2周目)―であると指摘されました。第三に、日本の防衛産業は長い間自衛隊のみを顧客としており、防衛装備の海外移転も規制緩和を行うに留まり、本来必要な防衛装備品の輸出戦略は正面から検討されず、欠落していると指摘されました。

次に、昨年12月に発表された安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)の内容について評価がなされました。まず、防衛産業の維持については、利益率の引き上げなどを通じて補助を行うことは短期的にはやむを得ないものの、中長期的には国際競争力の低下を招く恐れがあると指摘されました。そこで、先端的な装備品の開発についてはGOCO(Government Owned Contractor Operated)を活用して競争原理の導入を促し、ビジネスとして成立させることを提言されました。次いで、民生先端技術を装備品に積極活用する方針を明記したことは高く評価しつつ、防衛装備品の技術革新につなぐためのシンクタンク創設構想には様々な課題があることが指摘されました。今後の取り組みとしては、まず情報収集・分析、監視、ミサイル防衛など「守る分野」への参入を提言されました。また、防衛装備品の輸出戦略について、同盟国・友好国間で協力し、効率的で持続可能な装備品サプライチェーンを構築することを目的とし、日本が得意とする材料・部品、生産・補修技術などを駆使して、東アジアの生産・保守の拠点となることを提言されました。日本が競争力を持つ材料、部品などから入り、サブシステム、最終システムへと「駆け上がる」ことにより、装備品輸出をグレードアップすることができると述べられました。

最後に、防衛費増額を日本にとって望ましい防衛力強化へと繋げるためには、防衛産業の国際競争力の強化が不可欠で、①防衛産業を「産業」として機能させるための改革、②民生技術活用のための戦術、③装備品輸出の戦略が必要であり、これらが日本の経済力・技術力を活かした防衛分野における経済安全保障政策であり、このような要素を盛り込んだ「防衛生産・技術基盤戦略」(2014年)の改定が期待されると述べられました。

ご講演を受けて、当センターの髙山嘉顕研究員が、ドローンなどの新領域に強みを持つ中小企業やベンチャー企業が防衛産業に参入するための課題について質問を寄せ、さらに議論を深めました。参加者とのQ&Aセッションでは官民連携のためのセキュリティ・クリアランス、プロジェクト・マネージャーの人材育成、政府の調達制度などについて活発な議論が交わされました。