登壇者:
- ギヨーム・オラニエ(Guillaume Ollagnier)、フランス外務省 戦略・安全保障・軍縮局長
- テイムラズ・ゴルジェスタニ(Teymouraz Gorjestani)、フランス外務省 軍縮・不拡散担当副局長
モデレーター:
- 秋山信将博士、日本国際問題研究所(JIIA)軍縮・科学技術センター所長
オラニエ氏は冒頭で挨拶を行い、以下の3点を強調しました。
1. 現在の核情勢の評価
ロシアによる新型核兵器の開発およびウクライナでの通常戦争を支えるための核の脅しを繰り返し使用していることは、重大な戦略的懸念を引き起こしています。特にロシアのブダペスト覚書違反は、領土侵略を促進するための核威圧(「攻撃的聖域化」)という危険な行為を示しています。もしこれが成功すれば、危険な前例となり、世界的な核拡散のリスクを高めることになります。
中国の急速な核拡大、「先制不使用」政策と実際の能力のギャップの拡大、そしてそのプログラムの不透明性も重要な懸念事項です。一方、フランスは米国の核兵器増強の可能性や、ロシアと中国、両方との関係を管理する「三体問題」へのワシントンの適応という広範な影響を引き続き注視しています。
2. フランスの核戦略
フランスの核戦略は自国の死活的利益に対する脅威の抑止に基づき、防御的であることを厳格に守っています。戦術核や戦域核兵器は拒否しており、「最終的な核警告」という概念は戦術的使用ではなく、敵がフランスの死活的利益の閾値を超える可能性に対してシグナルを送る限定的で単発攻撃を意味します。
戦略は変わらないものの、フランスはパートナー国と戦略対話を行い、自国の抑止力は米国の拡大抑止を代替するものではなく補完するものであることを強調しています。欧州におけるフランスの死活的利益と抑止力に対する関心の高まりは、相互依存の深化と長期的な米国による保証の信頼性への懸念の表れです。
「厳格な十分性」の原則に基づき、フランスは潜在的な敵の兵器量に関わらず、相手が許容できない損害を与える能力を保持しています。この原則は核兵器の近代化にも適用されています。
3. NPTに関する懸念とフランスの拡散問題への立場
2026年のNPT再検討会議は重大な課題に直面しています。合意に至らなければ、特にロシアの行動に伴う核オプションへの関心の高まりの中で、条約の信頼性に影響を及ぼす恐れがあります。
フランスは「友好的拡散」を断固拒否し、核兵器の増加が安全保障の向上を意味しないことを強調しています。この立場は欧州のパートナーにも繰り返し伝えられており、欧州は既に3つの核兵器国によって保護されていることを強調しています。さらに、拡散を試みる国はその移行期間中に敵の攻撃を受けるリスクが高いことにも注意を促しています。
オラニエ氏の発言に続き、質疑応答の時間には活発な議論が行われました。
4. 議論のポイント
参加者は以下の重要課題を議論しました。
- 米国の欧州防衛へのコミットメントの信頼性
- ロシアに対して信頼できる抑止力を維持する上でフランスの核戦力が果たす役割
- 米国の「ゴールデンドーム」構想が拡大抑止に与える影響
- NPT枠組みの下、非同盟運動(NAM)諸国との軍縮・不拡散に関するフランスの関与。