イベント実施報告

第5回東京グローバル・ダイアログ

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2月29日

パート2:安全保障環境の変化と日本の対応 (2) 領土・主権と法の支配

ロシアのウクライナ侵攻をはじめ、法の支配に支えられた国際秩序は抗しがたい挑戦を受けている。本セッションでは、動乱の最中にある国際法秩序をどう理解し、堅持し、発展させていくべきかについて、法の支配に着目しながら多岐にわたる議論が行われた。

まず、法の支配を確立する上で解決しなければならない課題の1つとして国家によるダブルスタンダード的な行動を規律するルールの確立が指摘された。その手段の1つとして国際司法裁判所での紛争解決が考えられうるが、選択条項受諾宣言の留保が司法的解決を阻んでいることが指摘され、事実上強制管轄権を有する国際海洋法裁判所が、法の支配による紛争解決方法の好例として挙げられた。

さらに、法の支配の重要性を示す例として、2016年に下されたフィリピン・中国間の南シナ海をめぐる仲裁判断を取り上げた。特に、同判断によって、南シナ海に公海が存在し航行の自由が認められるべきことが明らかになり、その中で、九段線の意味するものが何なのかが明確化されたことで、平和的な解決への道筋となりうるものとの見解が示された。

加えて、自国領域を超えて他国に影響を及ぼすという意味で域外適用が行われている制裁については、ダブルスタンダードにならないよう規律が必要であることが強調された。議論の中では、制裁が国際法を進展させる例として、有志国により他国と協調して行われる対ロシア制裁の新規性が挙げられた。

質疑応答を通じて、ここ30年で「法の支配」の概念が国際社会で頻繁に使用されるようになった背景などについても議論された。

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