イベント実施報告

第5回東京グローバル・ダイアログ

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2月29日

パート1:米中競争とインド太平洋 (2) 経済安全保障

まず、「経済安全保障」とは何か、各登壇者の立ち位置を含めて考え方の相違を浮き彫りにする議論が行われた。

米国の参加者は、輸出規制や投資審査といった防御的措置と、技術・経済の強化を目的とした産業政策といった攻撃的措置の両方を含む政策を推進していることを踏まえ、経済安全保障の範囲は限定的であるべきだが不可欠であると見方が示された。日本の参加者は、経済安全保障を国家安全保障戦略に組み込み、重要なサプライチェーンや技術を守るための施策、民間セクターとの連携強化、同盟国・有志国との国際連携の取組みを進めている。一方、自由貿易体制と市場経済は日本にとって不可欠であり、これらの崩壊を重大な脅威であると指摘した。中国の参加者は、気候変動などのグローバル課題に対処するために国際協力の推進が必要であることを述べ、様々な地域枠組みを通じた包括的な対話の重要性を強調するとともに、経済活動の阻害につながりかねない安全保障上のリスクの過度な強調は避けるべきであると指摘した。また、議論の中で経済安全保障におけるサイバーセキュリティの重要な役割が強調され、サイバー脅威がいかに経済活動や国家安全保障に大きな影響を与えるかが指摘された。

続いて、経済安全保障の施策がもたらす経済成長へのプラスの側面について議論された。経済成長の原動力としての技術と、安全保障上の潜在的脅威としての技術の二つの側面があると指摘された。また、インフラ、重要な製造業、クリーン・エネルギーへの投資は、経済成長と安全保障の基盤となりうるものであるとの見解が示された。グローバリゼーションの恩恵と包括的な国際経済の重要性を確認しつつ、リスクを管理するバランスの取れたアプローチの必要性が強調された。

経済安全保障を健全に推進するための方策についても議論された。まず、各国のリスク認識、どこまで安全保障への投資を進めるべきなのか、対話を通じてお互いをよく理解することが不可欠であると強調された。また安定的で予測可能な国際経済秩序の必要性が強調される一方、国際的な経済ルール作りに対する米国の懐疑的な姿勢も指摘された。サイバーセキュリティ防御の重要性に関し、特に中小企業がサイバー脅威から事業を保護する上で直面する課題が指摘された。

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