ライースィー大統領の人事から見るイラン新政権の行方――「ディープステイト(影の政府)」の浮上とイラン核交渉難航の兆し(後編)
- 2021-09-15
- 貫井万里(文京学院大学人間学部コミュニケーション社会学科准教授)
日本は石油の約9割を中東からの輸入に依存しています。エネルギー分野での世界的潮流が脱炭素化や脱ロシア化に進むとしても、日本にとって中東が戦略的に重要であることに変わりはありません。一方、2021年の米軍のアフガニスタン撤退等、米国の中東でのプレゼンスが低下し、イラン核合意(JCPOA)交渉も停滞する中、「ポストJCPOA」に向けた地域秩序の再編が進んでいます。また、中東・アフリカ地域での中国のプレゼンスが増し、同地域での米・中・露のパワーバランスの変容は今後も続くと見られます。さらに、グローバル・サウスの存在感のさらなる高まりも予想されます。世界は西と東に分断されているのではなく、中東・アフリカを含む多くの国が各国益を守る「バランス外交」を実践し、西側とは異なる動きも進んでいます。当研究所は、地政学、地域研究、海洋・経済・エネルギー・食糧安全保障等の多角的アプローチにより地域の動向の諸相を明らかにすべく取り組んでいます。